2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15076204
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺嶋 正秀 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00188674)
|
Keywords | 蛋白質拡散 / 反応ダイナミクス / 分子間相互作用 / 蛋白質折りたたみ反応 / 過渡回折格子法 |
Research Abstract |
蛋白質の構造、反応を理解する上で、周囲の水分子との相互作用は重要な因子である。こうした相互作用、特に反応途中における相互作用のダイナミクスは、どうやれば検出できるのであろうかという問題解決に対する研究を行った。また、蛋白質の反応を化学反応として物理化学的に研究するための、新しい検出手法の開発を行い、以下のような結果を得た。 1.物理化学的に基本的で重要な物理量の一つである拡散係数が、反応とともに如何に変化するかを計測できる手法を開発することに成功した。この手法を、チトクロムcという電子移動にかかわる蛋白質の、折りたたみ反応を明らかにするために用いた。このために、NADH分子を2光子で光励起し、溶媒和電子を作り出し、チトクロムcの鉄原子を還元する手法を用いた。NADHを励起した後に観測される過渡回折格子信号を解析したところ、蛋白質の構造変化に従ってDが時間変化しているという証拠が得られた。これにより、初めて蛋白質折りたたみ反応における分子間相互作用の時間分解研究が可能となった。 2.ATPは生命反応のエネルギー通貨であり多くの蛋白質反応に関与する。ATPの関与する蛋白質反応を時間分解熱力学量の観点から研究するために、まず光でATPを作り出すことのできる、ケージドATP光反応を調べた。その結果、徐々にATPが遊離する過程を、拡散係数の時間変化として検出することに成功した。 3.光子エネルギーを吸収した蛋白質が、如何にしてそのエネルギーを溶媒へ放出するかという過程は、溶媒と蛋白質の相互作用の関係した基本的な過程であるが、時間分解での観測は困難であった。この問題に対して、ミオグロビンをフェムト秒パルスで光励起した後、ピコ秒での熱放出を検出することに成功して、エネルギーがまず蛋白質部分へ流れ、それから溶媒へ移っていっていることを示す実験的証拠を得た。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] T.Nada: "A novel method for study of protein folding kinetics by monitoring diffusion coefficient in time-domain"Biophys.J.. 85. 1876-1881 (2003)
-
[Publications] K.Okamoto: "Contribution of hydrogen bonding to the slow diffusion of transient radicals"Chem.Phys.Lett.. 372. 419-422 (2003)
-
[Publications] R.Miyata: "Transient thermal expansion of a protein in solution after photo-excitation off he chromophore : deoxymyoglobin"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 76. 1707-1712 (2003)
-
[Publications] J.Choi: "Photoreaction of caged ATP studied by the time-resolved transient grating method"Photochem.Photobiol.Sci.. 2. 767-773 (2003)
-
[Publications] 寺嶋正秀: "蛋白質におけるエネルギー散逸過程"レーザー研究. 31. 195-201 (2003)
-
[Publications] 寺嶋正秀: "蛋白質の熱力学量ダイナミクス"パリティ. 01. 58-60 (2004)