2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15076206
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 祐児 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (40153770)
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Keywords | 生物物理 / ナノ材料 / 生体分子 / 蛋白質のフォールディング / 老化 / アミロイド線維 / 蛋白質の構造安定性 / 透析アミロイドーシス |
Research Abstract |
1.アミロイド線維形成のリアルタイム観察:蛋白質のネイティブ状態は自由エネルギーの最小状態であり、フォールディングは自発的に起きる。他方、アミロイド線維形成は物質の結晶形成に類似した反応であり、核形成と伸長反応の2段階によって進行する。全反射蛍光顕微鏡とアミロイド線維に特異的に結合するチオフラビンTを用いて、アミロイド線維の伸長反応を一線維レベルかつリアルタイムで観察する方法を開発した。この手法を用いて、さまざまな基板表面でのアミロイド線維形成を観察したところ、強く負に帯電した基板上で、巨大なアミロイド球体が出現した、これはスフェルライト(spherulite)と呼ばれているものであり、形状は、老人班に酷似していた。 2.アミロイド線維の構造:固体NMRを用いてβラクトグロブリンのフラグメントが形成するアミロイド線維の立体構造を決定した。これより、並行βシートからなるアミロイド線維の基本構造が明らかとなった。これより、側鎖のパッキングや相互作用は球状蛋白質のように最適化されていないことが予想された。 3.アミロイド線維の伝播と適応:ネイティブ構造の別の特徴は各アミノ酸配列に対するフォールドのユニークさであり、ユニークなフォールディングのできる配列が進化の過程で選択されたと考えられる。これに対して、ひとつのアミロイド原性蛋白質やペプチドの形成するアミロイド線維の構造は多様である。アミロイド線維の構造多様性をもたらす原因のひとつは、空隙の存在である。密に充填される必要がないために、さまざまな線維構造が可能となる。β2ミクログロブリンに由来するK3ペプチドが、トリフルオロエタノール存在下で2種類の異なった構造をとることを見出し、その構造安定化の機構を明らかにした。また、アミロイド線維の伸長を繰り返したとき、異なった線維構造が伝播すると同時に、線維構造が変化する現象を見出した(アミロイド線維の適応)。アミロイドーシスの進行や伝播を考える上で重要な現象であると考える。
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Research Products
(7 results)