2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15076206
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 祐児 Osaka University, 蛋白質研究所, 教授 (40153770)
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Keywords | 生物物理 / ナノ材料 / 生体分子 / 蛋白質のフォールディング / 老化 / アミロイド線維 / 蛋白質の構造安定性 / 透析アミロイドーシス |
Research Abstract |
アミロイド線維は、蛋白質と水との相互作用の異常がもたらす構造状態である。アミロイド線維の構造安定性や形成機構を研究することは、蛋白質の構造や物性、水との相互作用に対する理解を深めるために重要である。透析アミロイドーシスに関わるβ2ミクログロブリンとアルツハイマー病に関わるAβペプチドを用いて、アミロイド線維の構造安定性やアミロイド線維形成の分子機構を研究して、以下の成果を得た。 1.線維形成のリアルタイム観察:既に、全反射蛍光顕微鏡とアミロイド線維に特異的に結合するチオフラビンTを用いて、線維の伸長反応を一線維レベルかつリアルタイムで観察する方法を開発し、β2ミクログロブリンやAβペプチドの線維形成を観察してきた。今年度は特に、自発重合によるAβアミロイド線維形成を観察し、極めて多様な線維の形成されることを明らかにした。これを基に、アミロイド超分子構造の多様性の重要性を提案した。 2.線維の配向と分光特性:アミロイド線維が流れによって配向し、特徴的な円二色性、直線二色性を示すことを発見した。特に直線二色性を基に、アミロイド線維の発色団の分子構造を推定できることを示した。 3.蛋白質の凝集によってアミロイド核形成が促進されることを示した。また、線維形成は水との相互作用において天然構造とは異なる大きな変化を伴なうこと、熱測定や体積変化によってこれを検出できることを示した。 全研究期間内では、蛋白質のフォールディングとアミロイド線維形成についての共通点と相違点を、明らかにすることができた。特に、水との相互作用において大きく異なる特徴を示した。アミロイド線維では露出した親水性基が水の広範な水素結合ネットワークを誘導している可能性がある。しかし、その分子論的な理解は未解決であり、今後の課題である。
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