2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15076212
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
平田 文男 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (90218785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 隆志 立命館大学, 情報工学部, 講師 (30373096)
吉田 紀生 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10390650)
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Keywords | アクアポリン / 分子認識 / 水分子 / プロトン / 3D-RISM理論 |
Research Abstract |
アクアポリン(水チャネル)の水透過機構およびプロトン排除機構の解明: アクアポリンは水分子を透過することにより細胞内の水の濃度を調節する重要な蛋白質である。このチャネルの水分子透過機構を解明するためにはチャネル内部の水分子の分布を求める必要があるが、現在の実験の分解能では蛋白質の構造と水分子の分布の相関を求めることは極めて難しい。我々は3次元RISM理論を用いて、結晶構造が決定しているアクアポリン(AQPZ)の4つの構造に関して、そのチャネル内部の水分子の分布を決定することに初めて成功した。これらの4つのうちひとつは水分子を透過している時の構造であり、他の3つは透過しない時のそれである。水の分布関数の解析から、チャネルを構成しているひとつのアミノ酸残基(R189)の配向がチャネルの開閉機能(ゲーテイング)に関わっていることを明らかにした。[Chem. Phys. Lett., 449, 196(2007)に既報] 「水分子を透過するアクアポリンが、何故、プロトンを透過しないのか?」という疑問はこのチャネルの構造が決定されて以来、大きな謎として研究者の挑戦を受けてきた。プロトンが移動する機構には二つが考えられる。ひとつは通常の拡散過程によってヒドロニウムイオンとして移動する過程、他は水素結合を介したトンネル効果によって移動する過程(GROTTHUS機構)である。我々は3次元RISM理論に基づき二種類のアクアポリン(AQP1、 G1pF)内部の水およびヒドロニウムイオンの分布を計算することにより、上記の疑問に解答を与えた。すなわち、AQP1ではヒドロニウムイオン(したがってプロトン)がチャネル内部から静電的に排除され、チャネルを透過することはできない。一方、GlpFではチャネル内部の概ね至るところにヒドロニウムイオンが存在することができる。しかしながら、この場合、水分子がチャネルのフィルター領域のアミノ酸と水素結合をすることにより、GROTTHUS機構が排除される。このことはプロトンの移動はゼロではないが非常に遅いという実験結果に符合している。[JACS(COMMUNICATION)130, 1540-1541(2008)に既報]
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