2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15081208
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木原 進士 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (20332736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 正 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90252668)
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Keywords | 遺伝子 / 内科 / 循環器・高血圧 / 糖尿病 / プロテオーム |
Research Abstract |
我が国において心血管疾患が急増している。我々は世界に先駆けて内臓脂肪過剰蓄積が高血圧・糖代謝・脂質代謝異常を集積し、心血管疾患発症の基盤となっていることを報告してきた。この概念はメタボリックシンドロームそのものであり、その病態解明を目的としたヒト脂肪組織発現遺伝子解析からアディポネクチンとアクアポリンアディポースを発見した。本研究は脂肪細胞の生態防御システムを包括的に解明し、臨床応用に向けてさらに推進させることを目的とするものである。 アディポネクチン欠損マウスは冠動脈の虚血再還流により、野生型対照マウスに比し有意な心筋梗塞巣の拡大を生じた。この現象はアディポネクチンのAMPキナーゼ経路を介した心筋細胞死抑制とCox-2経路を介したTNF-alpha産生抑制機構に基づくものであった。アディポネクチン欠損マウスにアディポネクチンを補充することで心筋梗塞巣は対照レベルに縮小し、野生型マウスにおいてもアディポネクチン血中濃度を2倍に増加させることで心筋梗塞巣はさらに縮小した。従ってアディポネクチン血中濃度が心筋梗塞の重症度を規定する因子の一つとなることが示された。また、新たな動脈硬化防御機構としてTNF-alphaによって増加する血管内皮細胞由来炎症性サイトカインであるIL-8産生をアディポネクチンが抑制することも明らかにした。ヒトにおける検討では、喫煙が脂肪細胞の酸化ストレス増加を介してアディポネクチン血中濃度を低下させること、本態性高血圧症例においてアディポネクチン血中濃度を増加させる薬剤であるチアゾリジン誘導体が左室拡張能を改善することを明らかにした。また、炎症性腸疾患においても、アディポネクチンがその抗炎症作用を介して防御的に作用することを報告した。 アクアポリンアディポースに関しては、その欠損マウスがグリセロールの肝臓への供給低下に基づく低血糖を生じること、脂肪細胞内グリセロキナーゼ活性上昇による中性脂肪合成亢進と併せて最終的に肥満の表現型を呈することが明らかとなった。 これらの成果から、肥満症と種々の代謝異常・心血管リモデリング異常・炎症性疾患を繋ぐ分子機構が脂肪細胞発現遺伝子を介して解明されつつあり、臨床応用に向けてさらに推進させ得ると考えられる。
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Research Products
(6 results)