2005 Fiscal Year Annual Research Report
ミクログリアによるグルタミン酸を介した神経伝達の動的制御
Project/Area Number |
15082204
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中西 博 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20155774)
|
Keywords | ミクログリア / 培養上清 / 海馬CA1野ニューロン / NMDA受容体 / グリシン結合部位 / パッチクランプ / HPLC / グリシン |
Research Abstract |
ミクログリア培養上清(MCM)中にNMDA受容体を介した反応を増強する活性が認められ、熱感受性ならびに熱抵抗性を示す二種類の因子の存在が確認された。熱感受性因子は分子量約70kDaの蛋白性分子であると考えられ、大脳皮質急性スライス標本におけるNMDA受容体を介したEPSCならびに急性単離した大脳皮質ニューロンにおけるNMDAによって惹起される内向き電流を最大で約2倍に増強した。一方、熱抵抗性因子は3kDa以下の分画に回収され、急性単離した海馬ニューロンにおけるNMDAによって惹起される内向き電流を最大で約15倍にまで増強した。この熱抵抗性因子による増強はNMDA受容体グリシン結合部位阻害剤(5,7-dichlorokynurenic acid)により抑制され、D-セリン分解酵素(D-amino acid oxidase)の影響を受けなかった。さらにHPLCを用いたアミノ酸分析によりMCMにはD-セリンは含まれないがグリシンが培養液に含まれる濃度の約10倍程度(80μM)含まれていることが明らかとなり、熱抵抗性因子はグリシンであることが判明した。免疫組織化学的手法により検討を行った結果、脳実質内の静止型ミクログリアにはグリシンの免疫反応は認められなかったが、活性化ミクログリアにおいて比較的強いグリシンの免疫反応が認められた。以上の結果より、ミクログリアから産生分泌される分子量約70kDaの蛋白性分子ならびにグリシンはNMDA受容体を介した反応を増強することが明らかとなった。このことから特に脳障害の急性期において障害部位に集積したミクログリアはこれらの分子を産生分泌することによりNMDA受容体を介したグルタミン酸による神経伝達を増強する可能性が強く示唆された。
|
Research Products
(6 results)