2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外ATPを介したアストログリア-ニューロン相互調節機構の解明
Project/Area Number |
15082212
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
井上 和秀 国立医薬品食品衛生研究所, 代謝生化学部, 部長 (80124379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 修一 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (10280752)
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Keywords | ATP受容体 / アストロサイト / グリオトランスミッション / カルシウムウエーブ / 三者間シナプス / P2Y1 / シナプス伝達 / 海馬 |
Research Abstract |
初年度は、脳のシナプス伝達にグリア細胞の積極的な関与を明らかにする目的から、特に、脳内グリア細胞で最大数を占めるアストロサイトと細胞外ATPに注目し、海馬初代培養を用いたCa^<2+>イメージング法による研究を遂行した。 先ず、アストロサイト間のコミュニケーション"gliotransmission"における細胞外ATP及びP2受容体の関与を明らかとした。海馬初代培養アストロサイトに機械刺激を加えると、被刺激細胞の細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]i)上昇が惹起され、これはタイムラグを経て、周辺アストロサイトにCa^<2+>波となって伝播した。アストロサイト間Ca^<2+>波伝播は、ATP分解酵素apyrase及びP2受容体拮抗薬suraminによってほぼ消失したことから、細胞外ATP及びP2受容体の活性化がCa^<2+>波形成に中心的役割を果たしていることが明らかとなった。薬理学的解析より、P2Y1受容体が責任受容体であることを明らかにした。ATP放出のリアルタイムイメージング法も開発し、ATPが刺激部位から放出され、拡散していくこと、この速度がCa^<2+>波伝播速度とよく相関していることも明らかにした。次に、ニューロン-アストロサイト共培養細胞を用いた検討を行った。海馬ニューロンは、興奮性シナプス伝達に起因するCa^<2+>振動を呈すが、これは外から加えたATPにより消失する。アストロサイトに機械刺激を加えると、ATPが放出され、これは、周辺ニューロンのCa^<2+>振動、つまりシナプス伝達を抑制した。さらに、アストロサイトは自発的にATPを放出しており、このATPはシナプス伝達を恒常的に抑制していることが明らかとなった。 このように、アストロサイトはATPを細胞外因子として、シナプス伝達をダイナミックかつ巧妙に制御していることが明らかとなった。今後、脳のシナプス伝達は、これまでのシナプス前及びシナプス後細胞の情報連絡による古典的なシナプス伝達としてではなく、アストロサイトを加えた三者間、つまり"三者間シナプス(tripartite synapse)"として捉えることが重要と考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] M.Tsuda, Y.Shigemoto-Mogami, S.Koizumi, A.Mizokoshi, S.Kohsaka, M.W.Salter, K.Inoue: "P2X4 receptors induced in spinal microglia gate tactile allodynia after nerve injury."Nature. 424. 778-783 (2003)
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[Publications] S.Koizumi, K.Fujishita, M.Tsuda, Y.Shigemoto-Mogami, A.Kita, K.Inoue.: "A dynamic regulation by astrocytic ATP of excitatory synaptic transmission cultured rat hippocampal neurons."Pro.Natl.Acad.Sci.USA. 100. 11023-11028 (2003)
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[Publications] T.Moriyama, T.Iida, K.Kobayashi, T.Higashi, T.Fukuoka, H.Tsumura, C.Leon, N.Suzuki, K.Inoue, C.Gachet, K.Noguchi, M.Tominaga: "Possible involvement of P2Y2 metabotropic receptors in ATP-induced transient receptor potential vanilloid receptor 1-mediated thermal hypersensitivity."J.Neurosci.. 23. 6058-6062 (2003)
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[Publications] T.Suzuki, I.Hide, K.Ido, A.Inoue, S.Kohsaka, K.Inoue, Y.Nakata.: "Production and release of neuroprotective TNF by P2X7 receptor-activated microglia."J.Neurosci.. 24. 1-7 (2004)
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[Publications] M.Tsuda, A.Mizokoshi, Y.Shigemoto-Mogami, S.Koizumi, K.Inoue: "Activation of p38MAPK in spinal hyperactive microglia contributes to neuropathic pain hypersensitivity following peripheral nerve injury."Glia. 89. 89-95 (2004)
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[Publications] S.Koizumi, K.Fujishita, K.Inoue, Y.Shigemoto-Mogami, M.Tsuda, K.Inoue.: "Ca2+ waves in keratinocytes are transmitted to sensory neurons : the involvement of extracellular ATP and P2Y2 receptor activation."Biochem.J.. 379. 1-10 (2004)
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[Publications] 井上和秀: "慢性疼痛とミクログリア:ATP受容体の関与.痛みの基礎と臨床"真興交易(株)医書出版部. 93-101 (2003)