2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外ATPを介したアストログリアーニュロン相互調節機構の解明
Project/Area Number |
15082212
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 和秀 九州大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80124379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 修一 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (10280752)
津田 誠 九州大学, 大学院薬学研究院, 助手 (40373394)
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Keywords | ATP / アストロサイト / 細胞死 / 活性酸素 / MAPK / 保護作用 |
Research Abstract |
昨年度は、ATPがアストロサイトにおいて酸化ストレス緩和に関与する遺伝子群(oxidoreductase genes)の発現を上昇させること、さらにATPは、過酸化水素(H2O2)誘発アストロサイト細胞死を濃度依存的に抑制することを明らかにした。アストロサイトは神経細胞に比べ酸化ストレスに強いが、本実験結果はP2Y1受容体を介するシグナル伝達系がアストロサイトの酸化ストレス抵抗性獲得と関係している可能性を示唆するものであるが、その細胞内シグナリングの詳細については不明であった。そこで、本年度は、H2O2誘導性細胞死のメカニズムを明らかにし、ATPがそれに対してどのように作用するかを調べた。H2O2誘導性細胞死にはMAPKであるERK1/2の活性化が関与しており、ERK1/2の活性化の程度及び活性化ERK1/2(P-ERK1/2)の核への持続的な集積が細胞死に強く関与すると考えられた。MEK1/2阻害剤によりERK1/2の活性化及び核への集積を抑制するとH2O2による細胞死が抑制された。ATPでもH2O2によるERK1/2活性化とP-ERK1/2の核への移行が強く抑制されており、ERK1/2の活性化を抑制することでH2O2による細胞死が抑制されることが明らかとなった。更にATPによってprotein tyrosine phosphatase(PTP)の発現・活性増加が見られた。PTPの直接のターゲットはtyrosine kinase、特にsrc familyであると考えられる。実際にH2O2による細胞死にはsrc familyの活性化が関与しており、PTPはsrc familyを抑制する事でその下流に存在するERK1/2の活性化を抑制して結果的に細胞死を抑制することが明らかとなった。 以上のように、本研究ではgliotransmitterであるATPが障害時にアストロサイトに作用して自身の保護作用の発揮に関与する可能性を明らかとした。
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Research Products
(6 results)