2003 Fiscal Year Annual Research Report
ATPを介したニューロン・ミクログリア相互作用の分子基盤
Project/Area Number |
15082213
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
高坂 新一 国立精神・神経センター, 神経研究所, 所長 (50112686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 圭子 国立精神・神経センター, 代謝研究部, センター研究員 (40392435)
平澤 孝枝 国立精神・神経センター, 代謝研究部, 流動研究員 (10402083)
内野 茂夫 国立精神・神経センター, 代謝研究部, 室長 (30392434)
神鳥 和代 国立精神・神経センター, 代謝研究部, センター研究員
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Keywords | ミクログリア / ニューロン / ATP / ATP受容体 / NMDA受容体 / カルシウム / グルタミン酸 |
Research Abstract |
マウスの胎児17日齢の大脳皮質から調整した初代培養神経細胞と、生後直後の新生児の脳から調整した初代培養細胞から得られるミクログリアを共に培養するニューロン・ミクログリア共培養系において、50μM ATPで10分間刺激時のニューロンの細胞内カルシウム動態をイメージング法を用いて解析した。その結果、ATP投与後数分から、ゆっくりとした細胞内カルシウム濃度上昇が観察された。この反応は、NMDA受容体の阻害剤であるAPV(100μM)で抑制されることから、NMDA受容体を介した反応であることが示唆された。また、ATPを除去後、数分〜十数分後から持続的なスパイク状のオシレーション様反応が観察された。この反応の大きさは、同一のニューロンにおいてもまちまちであり、また、ニューロン間でも同期していない反応であった。このスパイク状の反応もAPVで抑制されることから、NMDA受容体を介した反応であることが推測された。さらに、この反応は、ナトリウムチャネル阻害剤であるTTX(1μM)では抑制されないものであることを確認した。これらのATP刺激時のゆっくりとした反応、およびその後のスパイク状の反応は、ニューロンの単独の培養では検出できず、ミクログリアとの共培養時のみ観察されたため、ミクログリアが介在するものであると考えられる。 これまでに、アストロサイトにおいては、ATP刺激により興奮性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸)を放出することが報告されている。この興奮性アミノ酸の放出は、イオンチャネル型ATP受容体であるP2X7を介し、ATP刺激直後から始まり数分でピークに達することがわかっている。ミクログリアにおいてもP2X7を発現していること、また、共培養系におけるカルシウムイメージング実験において、ATP刺激数分後からNMDA受容体を介したニューロンの細胞内カルシウム濃度上昇が見られることから、ミクログリアにおいてもATP刺激時興奮性アミノ酸を放出している可能性がある。現在、HPLCにより確認中である。今後はATP刺激後のスパイク状の反応機構について、分子基盤の解析を進める予定である。 一方、これまでの我々の研究から、ATPはミクログリアに対してchemoattractantに働くことがわかっている。しかしながら、脳内でのミクログリアの挙動は未だ不明な点が多い。そこで、脳内のミクログリアを可視化できる技術を開発中である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Tsuda, M., Shigemoto-Mogami, Y., Koizumi, S., Mizokoshi, A., Kohsaka, S., Michael W., Salter, Inoue, K.: "P2X_4 receptors induced in spinal microglia gate tactile allodynia after nerve injury."Nature. 14・24. 778-783 (2003)
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[Publications] Uchino, S., Wada, H., Honda, S., Hirasawa, T., Yanai, S., Nakamura, Y., Ondo, Y., Kohsaka, S.: "Slot2 sodium-activated K+ channels bind to the PDZ domain of PSD-95."BBRC. 310. 1140-1147 (2003)
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[Publications] Sasaki, Y., Hoshi, M., Akazawa, C., Nakamura, Y., Tsuzuki, H., Inoue, K., Kohsaka, S.: "Selective expression of Gi/o-coupled ATP receptor P2Y_<12> in microglia in rat brain."Glia. 44. 242-250 (2003)
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[Publications] Hirasawa, T., Wada, H., Kohsaka, S., Uchino, S.: "Inhibition of NMDA receptors induces delayed neuronal maturation and sustained proliferation of progenitor cells during neocortical development."J.Neurosci.Res.. 74. 676-687 (2003)
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[Publications] Suzuki, T., Hide, I., Ido, K., Kohsaka, S., Inoue, K., Nakata, Y.: "Production and release of neuroprotective TNF by P2X7 receptor-activated microglia."J.Neurosci.. 24. 1-7 (2004)
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[Publications] Ohsawa, K., Imai, Y., Sasaki, Y., Kohsaka, S.: "Macrophage/Microglia-specific protein Iba1 binds to fimbrin and enhances its action-bundling activity."J.Neurochem.. 88. 844-856 (2004)
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[Publications] 高坂新一: "脳21「ミクログリアの機能と病態」"(株)金芳堂. 110 (2003)