2005 Fiscal Year Annual Research Report
H^+ーATP合成酵素等の機能制御におけるソフトな分子間相互作用
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15083203
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿久津 秀雄 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (60029965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 宏昌 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (70332749)
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Keywords | H^+-ATP合成酵素 / βサブユニット / 溶液NMR / 区分標識法 / 固体高分解能NMR / 構造解析 / 安定同位体標識 |
Research Abstract |
プロトンATP合成酵素は触媒部位を持つ膜表在性のF_1ドメイン(α_3β_3γδε)と、プロトンチャンネルを形成する膜内在性のF_0ドメイン(ab_2c_<10-14>)から構成され、サブユニットcは10〜14個集まってドーナツ状のリングを形成している。F_0の中をプロトンが流れるとcリングが回転しATP合成を行う。われわれは熱安定性が高く、生体内でcリングが10個のサブユニットcから構成されていることが唯一明らかにされている好熱菌のサブユニットc(以下、TF_0c)を有機溶媒中に可溶化し、多核・多次元NMRにより構造を決定した。主鎖の重原子のrmsdは0.30Åであった。TF_0cは大腸菌由来のEF_0cと似たようなヘリックス-ループ-ヘリックスの構造をとっていた。しかし、プロトン透過に必須な酸性残基(TF_0cはGlu56、EF_0cではAsp61)の側鎖の向きが二つの構造では異なっていた。さらに、大腸菌の場合と異なり、TF_0cGlu56のカルボキシル基(プロトン移動に必須)のプロトン解離によるcサブユニットの構造変化は見られなかった。したがって、EF_0cの構造変化をもとに提案されている現在のプロトン移動機構に疑問符が付いた。われわれはさらに、得られた構造とmultiple energy minimaの存在、Na^+-ATPaseのcリングの結晶構造を総合することにより、cリングの新しい回転機構、sidechain flipping modelを提案した。このモデルではGlu56側鎖のprotonation/deprotonationに連動してGlu56側鎖が向きを変え、サブユニットaとプロトンの受け渡しが可能になる。これは今まで提案されていたサブユニットcの大きな構造変化を伴うモデルより、エネルギー的な観点から見ても合理的なモデルである。さらに、本年度は脂質膜に結合したシトクロムC_3が引き起こす電子移動のメカニズムを明らかにした。
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Research Products
(7 results)