2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15085202
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中林 誠一郎 埼玉大学, 理学部, 教授 (70180346)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 浩司 静岡大学, 電子工学研究所, 助教授 (30211931)
|
Keywords | 強磁場 / 水素結合 / 屈折率 / 表面プラズモン / 磁場効果 / 磁気力 / 光物性 / 磁気物性 |
Research Abstract |
強磁場中におかれた液体、特に水は、磁場の上昇と共に、その性質を無視できない程度に変化させた。純水を10T程度の強磁場におくと、磁場強度の増加と共に光学的屈折率が上昇した。10T下では、水の屈折率は無磁場よりも1%増加した。また、水の超音波物性も、強磁場中で変化する事が、明らかになった。強磁場(10T)中での水の物性値の変化は、高々数%を越えない。しかしながら、磁場が直接、液対の性質を支配する可能性を有する事は、驚嘆に値する。この磁場効果が出現するためには、液体は、水素結合のネットワーク(過渡的なクラスター構造)を持つ事が必要である事が判った。また、水素結合性の液体であっても、例えば、塩を添加して水素結合を破壊すると、この磁場効果は消失した。つまり、磁場の効果は、孤立した溶媒分子に作用するのではなく、多数個の溶媒分子が構成するクラスターが磁場から影響を受けるものと推定された。応用的な観点から眺めると、溶液物性を磁場により制御可能であるならば、この事実を基にして、化学反応を磁場で制御する新しい機策を生み出す事ができる。例えば、マーカスの理論によると、溶液中での電子移動速度は、液体の屈折率の関数として変化する事が知られている。また、とりわけ酵素反応などの生体反応は、水溶液中で進む非線形性の高い触媒反応であるから、例えば、強磁場が液体の構造変化を誘起する事により、酵素分子の2次構造が変化し、反応に決定的な影響を与える可能性が示唆された。熱力学的に考えて、10Tの強磁場といえども、溶媒1分子に与える磁場からの摂動の大きさは、熱エネルギーによる擾乱を越えない。従って、溶液中に存在する2次構造が磁場から影響を受げると推定される実験結果は、合理的に納得できた。磁場が誘起する液体の構造変化を、直接観測する事を目指して装置の開発をおこなった。水素結合にもとづく振動スペクトルは、液体の振動分光学による知見の蓄積から低波数領域に出現し、時として、分散型のラマン・赤外測定は、ともに容易ではない事が知られている。「周波数領域の情報」と「時間領域の情報」は、フーリエ変換でお互いに等価であるから、周波数領域で困難な低波数領域の情報を、申請者が現有するフェムト秒レーザーの測定技術(光カー効果測定)を基にして、時聞領域で磁場の関数として測定しようと準備している。本実験により、磁場誘起構造変化の分子論的実体が明らかになれば、生体系への磁場効果や新原理による化学反応制御など、新しい磁気科学の地平が拓けるものと期待できる。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] H.Hosoda, H.Mori, N.Sogoshi, A.Nagasawa, S.Nakabayashi: "Refractive Indices of Water and Aqueous Electrolyte Solutions under High Magnetic Fields"J.Phys.Chem.A. 108. 1461-1464 (2004)
-
[Publications] A.Karantonis, M.Paitas, Y.Miyakita, S.Nakabayashi: "From excitatory to inhibitory connections in networks of discrete electrochemical oscillators"J.Phys.Chem.B. 107. 14622-14630 (2003)
-
[Publications] E.Mishina, T.Tamura, H.Sakaguchi, S.Nakabayashi: "Kinetics of Adsorption and Self-Assembling of Thiophene and Dodecanethiol Studied by Optical Second Harmonic Generation"Chemistry Letters. 32. 652-653 (2003)
-
[Publications] E.Mishina, Q.-K.Yu, T.Tamura, H.Sakaguchi, A.Karantonis, S.Nakabayashi: "Kinetic profile of adsorption and self-assembling of thiophene oligomers studied by optical second harmnic generation"Surface Science. 544. 269-277 (2003)
-
[Publications] Q-K.Yu, Y.Miyakita, S.Nakabayashi, R.Baba: "Magnetic Field Effect on Electrochemical Oscillation during Iron Dissolution"Electrochemistry Communications. 5. 321-324 (2003)
-
[Publications] M.Nawa, R.Baba, S.Nakbayashi, C.Dushkin: "Ordering Effect of high magnetic Field on Silver Nanoparticle Arrays for Electron Transfer Devices"Nano.Lett. 3. 293-297 (2003)