2006 Fiscal Year Annual Research Report
特異なスピン非局在様式を持つ安定中性ラジカルの開発
Project/Area Number |
15087202
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 靖 大阪大学, 理学研究科, 助教授 (70230133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 孝史 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60324745)
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Keywords | 中性ラジカル / 開殻分子 / 奇交互炭化水素 / フェナレニル / スピン分極 |
Research Abstract |
一重項ビラジカルは、分子内で不対電子が弱くベアリングしており、一般には反応活性中間体として検出されるに留まる。本研究では、奇交互炭化水素フェナレニルの高いスピン非局在化能を活用し、一重項ビラジカル性を有する2種の炭化水素を固体状態で安定に単離することに成功した。それぞれの化合物の一重項ビラジカル性は、量子化学計算から30%および50%と見積もられた。このような特徴は結晶構造に強く反映されており、van der Waals半径の和に比べて遥かに小さい面間距離約(3.1Å)でフェナレニル環同士が重なり合っていた。電気化学的に見積もったHOMO-LUMOギャップは、1.04〜1.14eVの小さな値であり、圧縮ペレット二端子法で測定した室温での電気伝導度は、約10^<-5>S cm^<-1>程度であった。この値は、単成分炭化水素分子としては最も高い導電性である。また、二光子吸収スペクトルを測定したところ、炭化水素としては最大の二光子吸収特性が観測され、理論的に予測されていた一重項ビラジカルの大きな二光子吸収特性を初めて実験的に明らかにした。このように、一般的には不安定な一重項ビラジカルを安定に単離することで、新たな固体物性への展開が可能となった。その特異な電子構造は電子の広範囲にわたる非局在化を許容するものであり、結合交替の無い無限共役系の構築への足掛かりとなる。
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Research Products
(9 results)