2007 Fiscal Year Annual Research Report
先史・古代社会の遠隔地交渉に関する人類史的総合研究
Project/Area Number |
15102002
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
上村 俊雄 The International University of Kagoshima, 国際文化学部, 教授 (40136833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中園 聡 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (90243865)
大西 智和 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (70244217)
松本 直子 岡山大学, 大学院・文化科学研究科, 准教授 (30314660)
三辻 利一 大阪大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (40031546)
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Keywords | 考古学 / 文化財科学 / 遠隔地交渉 / 蛍光X線分析 / 胎土分析 / 認知考古学 / ディアスポラ / 仲介者 |
Research Abstract |
平成19年度は本研究の最終年度であり,本研究の完成を目指して研究を遂行した。また,現地調査・実験等で,必要な追加研究を実施した。さらに,蛍光X線分析等による土器の胎土分析も継続して実施したが,特筆すべきものは,南太平洋地域への人類拡散の議論でしばしば問題になるラピタ土器について,現地研究者の協力を得てフィジー最古の初期ラピタ文化の遺跡出土の多数の試料に対して蛍光X線分析を実施した。土器の移動の問題では,生駒山西麓産とされる縄文・弥生土器・粘土の分析でも従来より詳細な議論を行うに足る成果が得られた。こうして,積極的な取り組みがなされてこなかった低火度焼成軟質土器の産地問題に関する蛍光X線分析法の確立という点でも大きな成果を得た。 本研究で実施した五島列島宇久島の宇久松原遺跡および薩摩半島西部の高橋遺跡の学術発掘調査について,最終的な整理と報告書作成を行い,それぞれ報告書を刊行することができた。弥生時代の南西諸島との遠隔地交渉に関与したと目される2つの重要遺跡について,遠隔地交渉の主体者あるいは仲介者としての位置づけを明確に行い,墳墓の精密な実測図等とともに公表したことは,遠隔地交渉研究の重要性を主張するうえで不可欠の基礎文献を提示できたことになる。 理論的側面では,超長期的観点に立った遠隔地交渉の類型化について,前年度の初期的取り組みから発展させ,考古学のほか広領域的観点から高次の抽象化を行った。その結果,遠隔地交渉に視点をすえることで,従来の発展段階論的な「時代区分」とは異なる基準による歴史叙述が可能になってくることを,当初の目的以上に明確に示すことができた。以上の成果は,本課題に対する多角的アプローチや認知考古学など理論的アプローチの重要性を示すものであり,これからの考古学のあり方を示すことにもなると自負している。
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Research Products
(18 results)