2006 Fiscal Year Annual Research Report
非線形偏微分方程式の大域的可解性と解の漸近挙動に関する統一理論
Project/Area Number |
15104001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小薗 英雄 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (00195728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 泉 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (40154744)
柳田 英二 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (80174548)
小川 卓克 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (20224107)
柳沢 卓 奈良女子大学, 大学院人間文化研究科, 助教授 (30192389)
中村 誠 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (70312634)
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Keywords | ナビエ・ストークス方程式 / コーシー問題 / 渦度ベクトル / 平均振動 / エネルギー不等式 / ベゾフ空間 / 爆発解 / 大域解 |
Research Abstract |
Navier-Stokes方程式は速度ベクトルと圧力という4つの連立方程式系であり,非線形のため一般的な解法は今日もなお困難を極めている.最大の障害は「3次元空間における初期値問題に対して任意のデータを与えたときの時間大域的な滑らかな解の存在問題」である.これは,Clay数学研究所によって提唱された7つのミレニアム未解決問題のうちのひとつである.本研究ではNavier-Stokes方程式のミレニアム問題を中心とした同方程式に関する研究の歴史,最近の動向及び今後の課題を検討し部分的な結果を得た.実在する流体運動では全空間における問題ではなく,境界のある内部領域や遠方を含む外部領域においてをNavier-Stokes方程式考えた方がより妥当であるが,本研究では簡単のため,主に流体が3次元空間全体に満たされている場合を扱った.Cauchy問題の関心事は次にあげる問いである. (i)初期条件に対して,Navier-Stokes方程式はすべての時間で定義された解を有するか?(ii)その様な解は唯一つか?また,時空間変数で何階でも微分可能か?(iii)ある時刻が存在して,解はその時刻の前では微分可能な滑らかな関数であるが,その後は滑らかさを失うことがあり得るか?(iv)2つの初期条件が十分近いとき,それらに対応するNavier-Stokes方程式のそれぞれの解も近いか?(v)(i),(iii)に関連して解はそれぞれ時間無限大あるいは爆発時刻においてどのような挙動を示すか? (i)は時間大域解の存在で,本研究ではBesov空間で考察した.(ii)は解の一意性と正則性で,これまでの結果をより一般的な非コンパクトな境界をもつ一様に2階微分可能な非有界領域に拡張した.(iii)は解の爆発である.もし渦度ベクトルの2成分の平均振動ノルムが時間に関して可積分であれば,爆発は起こらず解は連続的に拡張できることを証明した.(v)は解の漸近挙動に関する問題で,上記の一般の非有界領域においてエネルギーが時間とともに零に減衰することを証明した.特に(i),(ii)および(iv)が肯定的でありかつ(v)において,時間無限大で解がある定常関数に収束するときNavier-Stokes方程式のCauchy問題は適切であるという.偏微分方程式論においては,与えられた方程式のCauchy問題が適切であるかどうかを調べることが主要な研究対象となる.本研究ではNavier-Stokes方程式の適切性について部分的な結果を得たといえる.
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Research Products
(6 results)