2004 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内1分子計測法を用いた走化性情報処理システムの解析
Project/Area Number |
15109003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳田 敏雄 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (30089883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐甲 靖志 大阪大学, 生命機能研究科, 助教授 (20215700)
岩根 敦子 大阪大学, 生命機能研究科, 助手 (30252638)
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Keywords | 走化性 / 1分子 / 細胞性粘菌 / 神経細胞 / ゆらぎ / 細胞内情報伝達 / GPCR / 神経成長因子NGF |
Research Abstract |
本研究は神経細胞や免疫細胞、粘菌細胞などの真核細胞にみられる走化性(化学走性)の細胞内情報処理メカニズムを解明することを目的とする。我々が開発してきた細胞内1分子計測法を用いて、化学物質の受容から細胞運動の制御にいたる情報処理過程を生きた細胞内で1分子イメージングすることにより、熱ゆらぎ(ノイズ)の影響を受けながら作動している情報伝達分子の振るまいを明らかにする。本年度は主に次の2点について明らかにした。 ニワトリ神経成長円錐に神経成長因子(NGF)が結合すると葉状仮足が形成され、神経突起の伸長が誘導される。この過程におけるNGF結合(すなわち信号入力)を生きた神経細胞上で1分子イメージングすることに成功した。結果、神経成長円錐に存在する全NGF受容体の約4%にあたる約40分子の受容体がNGFによって活性化されることで仮足形成が誘導されることが分かった。神経細胞におけるニューロトロフィン刺激の入力メカニズム、および神経細胞の突起形成メカニズムについて重要な知見を与えている。 免疫細胞や粘菌細胞の走化性情報伝達系を構成するGPCR型走化性受容体、三量体G蛋白質、癌抑制遺伝子PTEN、PHドメイン含有蛋白質などの細胞内での振る舞いを1分子レベルで観察することに成功した。誘引性化学物質がGPCR型受容体に結合する過程の時系列解析により、信号入力はランダムな過程でありノイジーな入力であることが明らかになった。また、受容体からの出力となる三量体G蛋白質の活性化過程において、G蛋白質が細胞膜と細胞質の間を循環していることが見いだされた。同様の現象がPTENやPHドメイン含有蛋白質でも起こっており、その反応の時間スケールはいずれも数百ミリ秒程度であった。走化性情報処理過程はランダムな反応の連鎖であり、本来的にノイジーと言える。ノイジーな情報処理を捉える理論的枠組みについても検討を行っている。
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Research Products
(25 results)