2005 Fiscal Year Annual Research Report
難治性循環器疾患を克服する人工脳幹部による戦略的な自律神経制御
Project/Area Number |
15200040
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
砂川 賢二 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (50163043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉町 勝 国立循環器病センター(研究所), 循環動態機能部, 部長 (40250261)
川田 徹 国立循環器病センター(研究所), 循環動態機能部, 室長 (30243752)
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Keywords | 心筋梗塞 / 心不全 / 人工脳幹部 / 迷走神経 / 自律神経 / 抗炎症作用 |
Research Abstract |
本研究は虚血性(心筋梗塞)の心不全モデルにおいて電子的な人工脳幹部を用いて自律神経系の緊張を自在に制御することにより、心不全による死亡率の低減と心臓リモデリングの抑制をはかり、現代医療では手の届かない重篤な心不全治療に新たな道を開くことを目的とする。本年度は迷走神経を標的とした急性心不全の治療について以下のような研究を展開した。最近の研究では迷走神経刺激は出血性ショックやエンドトキシンショックにおいて、腹部神経支配を介する抗炎症作用によって血行動態を改善させることが報告されている。そこで、人工脳幹部による心不全治療のメカニズムを究明するために、人工脳幹部治療において腹部迷走神経支配がどのような役割を持つかを検討した。ハロセン麻酔下のラットを腹部迷走神経温存群(INT群)と腹部迷走神経切除群(VLX群)に分け、左冠動脈閉塞によって急性心筋梗塞を作成した。右迷走神経に治療用の刺激電極を装着し、これまでに開発した人工脳幹部による迷走神経刺激治療を行った。治療を行わない場合、心筋梗塞作成後60分においてほぼ全例死亡するが、人工脳幹部による迷走神経刺激治療によって生存率はINT群では18/20(90%)、VLX群では15/19(79%)に向上し、両群間で大きな差はなかった。この結果は、人工脳幹部による迷走神経刺激治療において、腹部迷走神経を介した抗炎症作用は生存率改善にあまり重要でないことを示し、心臓作用が主たる治療メカニズムであることを示唆した。一方で、血圧、左室圧微分最大値、右房圧などの血行動態の所見はVLX群のほうがINT群よりも良好であり、肝臓のTNF-α、IL-1βの値がVLX群で低値を示したことから、腹部迷走神経を介した抗炎症作用は心筋梗塞急性期の血行動態の改善に貢献することが示された。
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Research Products
(4 results)