2004 Fiscal Year Annual Research Report
酸性霧の樹冠への沈着から森林衰退までのプロセスの解明と森林再生プログラムの検討
Project/Area Number |
15201008
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
井川 学 神奈川大学, 工学部, 教授 (70120962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜井 直樹 広島大学, 総合科学部, 教授 (90136010)
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Keywords | 霧 / 雨 / 硝酸 / 林内雨 / モミ / 森林衰退 / カルシウム / ホウ素 |
Research Abstract |
本研究では、大山において、酸性霧の問題を中心に大気汚染の沈着状況を総合的に調査し、その沈着支配要因を明らかにすると共に、その環境影響としての森林衰退の原因解明を目的としている。 今年度の調査結果としては、大山では霧の発生頻度は高いが、経年変化として霧の発生頻度の減少および霧水量の減少とこれに伴う霧水内成分濃度の増加が見られている。これは麓のエアロゾル濃度の減少のために霧が発生しにくくなっていることによる。大山の植生に及ぼす汚染物質の沈着の影響を見るために、標高の異なる地点の林内雨調査の結果、降水量、汚染物質沈着量ともに大きな標高依存性を示した。これは、霧の発生頻度と風速が標高とともに増加するため霧の沈着量が標高とともに増大したためである。霧組成の標高依存性は小さく濃度は標高の上昇とともに減少するものの霧水量の標高依存性に反比例するほどではないため、霧による汚染物質の沈着量は標高によりかなり増大している。その他に乾性沈着、雨による沈着もあり、それらの寄与度についてより精緻な見積もりが得られるように検討を進めている。 モミ枝葉への暴露実験結果では、暴露液pHの減少とともにカルシウムだけでなく、ホウ素や細胞壁成分のウロン酸や糖類の溶脱が起こることが示された。これはフィールド実験結果とも対応している。さらにブナとモミ苗木への暴露を昨年秋より行っているので、今年の秋には苗木の応答について結果をまとめたい。また、霧水中の成分およびその水溶液中に含まれる成分が紫外線の照射によりOHラジカルを生成し、植物葉から成長に必要な成分の溶脱を引き起こすことを曝露実験により明らかにした。溶脱成分のうち特にホウ素は、植物の細胞分裂ための必須成分で細胞壁に局在している。従って、特に芽の付近の細胞分裂を行おうとする細胞の細胞壁表面からホウ素が溶脱することは、植物全体の生長を大きく阻害すると考えられる。
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Research Products
(5 results)