Research Abstract |
資源の有効利用,環境保護の面から,使用済み材料,特に鉄鋼材料のリサイクルは国家的および世界的規模で重要な課題となってきている.しかし,市場から回収されるスクラップには,鉄鋼材料で熱間加工性を劣化させるSnやCuなどの不純物が混入し,これらの不純物の粒界偏析に起因して著しい脆化が生じる.一方,粒界偏析は粒界の性格・構造に強く依存し,低エネルギーの特殊粒界では起こり難く,逆に高エネルギーのランダム粒界で顕著に起こることがこれまでの研究から明らかにされている.本研究では,これらの基礎的知見を基に,粒界工学的手法によりリサイクル材料の粒界偏析および粒界偏析脆化を抑制する方策を構築することを目的としている.本年度は,粒界偏析に鈍感な対応粒界の頻度を高めるための材料プロセスについて検討した. 1.急冷凝固法による粒界微細組織制御:本研究では,Fe-Sn合金を急冷凝固法により作製し,粒界微細組織を定量評価するとともに,曲げ試験により力学特性を評価した.その結果,通常の加工熱処理により得られる低Σ対応粒界の頻度が約20%程度であるのに対し,急冷凝固法により作製された試料の対応粒界頻度は約45%と2倍以上になることを見出した.室温における曲げ試験により力学特性を評価した結果,対応粒界頻度が低い通常の加工熱処理試料では,ほとんど塑性変形することなく脆性的に破壊するのに対し,対応粒界頻度が高い急冷凝固試料は装置の制約内において破壊することなくよい延性を示した. 2.低ひずみ-焼鈍法による対応粒界頻度の向上:オーステナイトステンレス鋼のような積層欠陥エネルギーの低い材料では,低ひずみ-焼鈍法により多数の焼鈍双晶が導入され,対応粒界頻度を向上させることができる.本研究では,効率よく双晶を導入する方法について検討した結果,焼鈍双晶はランダム粒界が移動する際に粒界面が双晶面である{111}に平行になった時に形成されやすいことを見出した.これらの結果から,双晶密度を高めるためには,、ランダム粒界の優先的な粒界移動がおこる条件での熱処理が必要であることを明らかにした.
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