2004 Fiscal Year Annual Research Report
人間言語の本質的特性に関する理論言語学・機能言語学・言語脳科学による統合的研究
Project/Area Number |
15202011
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高見 健一 東京都立大学, 人文学部, 教授 (70154903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 平三 学習院大学, 文学部, 教授 (10086168)
今中 國泰 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90100891)
萩原 裕子 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (20172835)
石野 好一 東京都立大学, 人文学部, 教授 (20151392)
岡本 順治 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (80169151)
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Keywords | 転位 / 非対格性 / 極小理論 / 機能統語論 / 語順 / 受動化 / 事象関連電位 / P600 |
Research Abstract |
人間言語の本質的特性である「転位」に焦点を当て、今年度は、昨年度に引き続き、理論言語学班、機能言語学班、言語脳科学班がそれぞれ独自の研究を進め、これら3つの班の接点を探ることに努めた。理論言語学班と機能言語学班では、転位に関して、英語形容詞の後位修飾と語順、英語・ドイツ語・日本語の非対格性現象と転位、ドイツ語のAバー移動、ロマンス語の上位機能範疇領域への転位現象、英語の再帰代名詞の統語的性質などが取り上げられた。特に非対格性に関しては、昨年度の研究が押し進められ、生成理論と機能統語論の両立場から分析が進められた。そして、非対格性が絡んでいるとこれまで主張されてきた多くの現象が、単に動詞の意味のみに基づく現象ではなく、文脈や語用論的知識、文の意味的・機能的要因など、様々な要因によりその適格性が決定づけられる現象であることが明らかとなった。また、英語の叙述形容詞の語順は、A-Nの1通りであること、ドイツ語では、受動化における主語位置への移動は義務的でないこと、英語の再帰代名詞の束縛関係は、フェイズ(phase)によって規定できることなどが示された。一方、言語脳科学班の事象関連電位実験では、128チャンネル脳波装置を用いて日本語の左方転位かき混ぜ文、右方転位文,三項動詞文などの転位現象の実験が行なわれた。右方転位文の実験では,名詞句および付加詞どちらの転位においても陽性成分(P600)が認められたが、頭皮上分布の点では、項では左前頭部に,付加詞では右側頭〜頭頂部に大きな活動が認められ,項と付加詞の処理では脳内基盤が異なることが示唆された。三項動詞文の処理では、動詞句内かきまぜ文(ガ-ヲ-ニ)が標準語順文(ガ-ニ-ヲ)に比べて、動詞の出現時に統合を表す陽性成分が観察された。これは、転位要素が構造へ統合する位置が構文によって異なることを示唆しており、従来の統語解析理論への再考を促すものとして注目される。
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Research Products
(7 results)