2003 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける家畜の起源と伝播に関する動物考古学的研究―特に豚、馬、牛について
Project/Area Number |
15202023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
松井 章 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター・遺物調査技術研究室室長 (20157225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (10250507)
石黒 直隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (00109521)
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
富岡 直人 岡山理科大学, 理学部, 助教授 (90241504)
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (20183246)
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Keywords | 家畜 / 動物考古学 / DNA / 安定同位体 / 食性分析 / 比較形態学 / 骨肥料 / ブタ |
Research Abstract |
本年度の研究は、東アジアの共同研究体制をつくるため、ロシア国科学アカデミーのユーリー・ヴォストレットフ博士、韓国釜山大学シン・ギョンチュル教授、台湾中央科学院リー・クァンチー博士、カンボジア国王立芸術大学ブェン・ブティー氏らと個別に会合を持ち、ブタの起源について共同研究を遂行することで合意した。方法は、現地における形態学的研究を松井、富岡が行い、可能な場合は試料を日本に持ち帰り、石黒、南川、中村らに試料を送付し、DNA、安定同位体、年代測定などの分析試料を採取し、分析を行うこと。それができない場合は、石黒、南川、中村らが現地に出張して試料を採取し、持ち帰ることである。これらの研究によってイノシシとブタとの区別が一層、明かになるだろう。来年度は、台湾、カンボジアなどに出かけて試料採取を行いたい。 本年度の実績として、高知県土佐市居徳遺跡出土のイノシシ属の骨の検討から、家畜化されていた痕跡を観察したことが挙げられる。すなわち、縄文晩期の包含層から出土したイノシシ属の中に、大きなイノシシ属の下顎が含まれているが、その歯牙のサイズが植わっている顎骨に比較すると小さいことが認められた。釜山大学から出版された韓国金海会げん里貝塚の発掘調査報告書に、動物遺存体を執筆し、種名の報告と共に、1世紀から5世紀の韓国南部における骨角器製作技術の一端を明らかにすることができた。また、イノシシ属の骨から採取した炭素・窒素の安定同位体の分析から、それらが飼養されていた可能性が高いことを明らかにできた。 国内の家畜研究では、鹿児島県知覧町にある牛馬の骨粉水車跡を踏査し、近代化遺産の一つとして、牛馬骨を骨肥料として再利用したことを考古学的に明らかにすることを試みている。次年度にミュージアム知覧の協力を得て発掘を実施したい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Watanobe, T., Ishiguro, N., Nakano, M., Matsui, a., Hongo, H., Takahashi, O.: "Prehistoric Sado Island Populations of Sus scrofa Distinguished from contemporary Japanese wild boar by ancient mitochondrial DNA"Zoological Science. 21. 219-228 (2004)
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[Publications] Zhen, Y., Dong, Y., Matsui, A., Udatsu, T., Fujiwara, H.: "Molecular genetic basis of determining subspecies of ancient rice using the shape o phytoliths"Journal of Archaeological Science. 30. 1215-1221 (2003)
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[Publications] 松井章: "動物と関わった人たちの歴史"部落解放史・ふくおか. 110. 137-158 (2003)
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[Publications] 松井章: "動物祭祀"いくつもの日本 神々のいる風景. 7巻. 89-119 (2003)
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[Publications] Zhen, Y., Matsui, A., Fujiwara, H.: "Phytoliths of rice detected in the Neolithic sites in the Valley of the Taihu Lake in China"Journal of Environmental Archaeology. 8(2). (2004)
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[Publications] Matsui, A., Kanehara, M., Kanehara, M.: "Palaeoparasitology in Japan-Discovery of Toilet Features'"Memorids do Instituto Oswaldo Cruz, Sao Paulo. 98. 127-136 (2003)
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[Publications] 松井章(編集): "環境考古学マニュアル"同成社. 401 (2003)