2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子の宇宙・地球環境における多次元同位体システマティクス
Project/Area Number |
15204052
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
奈良岡 浩 岡山大学, 理学部, 教授 (20198386)
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Keywords | 有機分子 / 同位体組成 / 炭素 / 水素 / 酸素 / バクテリア / 隕石 / 堆積物 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、様々な地球環境試料および隕石中に含まれる有機分子について炭素・水素の安定同位体組成を測定した。深海底の海底熱水噴出孔近傍に生息するシンカイヒバリガイでは脂肪酸やジプロプテンなどでは炭素と水素の同位体比に正の相関が見られたが、共生するバクテリアの種類(イオウ酸化バクテリアまたはメタン酸化バクテリア)によって同位体組成の範囲が異なった。また、陸上温泉におけるバクテリアマットにおいて水素酸化バクテリア由来と考えられる炭素数20の一不飽和脂肪酸では今まで自然界では報告がない約-450‰の同位体的に軽い値が得られた。これは水素酸化バクテリアが水素源として同位体的に軽い分子状水素を用いるためと考えられる。有機分子の炭素・水素多次元同位体組成がバクテリア生態系を解析する上で有効な手法であることがわかった。また、榛名湖の湖底堆積物中に含まれる脂肪酸やフィトール、ステロールなどの炭素・水素同位体比の同時解析によりこれらバイオマーカーの起源をよりはっきりと議論することが可能となった。さらに炭素質隕石中に最も多く存在する高分子状有機物を含水熱分解することによって生成した酢酸の水素および炭素の分子内同位体組成分布を測定し、地球上のものと分布が全く異なることを明らかにした。 これらの研究成果をゴールドシュミット国際会議、日本地球化学会年会、日本惑星科学会講演会などで発表するとともに国際学術誌に数編の論文を発表した。研究代表者の大学異動により、有機物の酸素同位体比測定法開発に関して若干遅れ気味であるが、高温熱分解炉で有機物を分解させて酸素を一酸化炭素にして、酸素同位体比測定を標準有機化合物および炭素質隕石中の高分子状有機物について行った。比較的順調に研究は進行していると考えている。
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Research Products
(7 results)