2005 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子の宇宙・地球環境における多次元同位体システマティクス
Project/Area Number |
15204052
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
奈良岡 浩 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (20198386)
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Keywords | 有機化合物 / 安定同位体 / 宇宙 / 地球環境 / 隕石 / 紫外線分解 |
Research Abstract |
研究実施計画書に記載した宇宙における有機分子の生成過程を解明する目的で炭素質隕石中の不溶性有機物の水素同位体組成を本研究で導入した元素分析熱分解同位体比質量分析計(EA/pyrolysis/IRMS)を用いて測定した。その結果、δDが400‰から1000‰と幅広く分布することを明らかにした。今までの炭素質隕石の変成度も考慮すると、隕石母天体上で有機物が熱変質を受けると水素が同位体的に軽くなることがわかった。また、隕石中に含まれる酢酸などの低分子有機分子の紫外線照射での影響を評価するために、標準試薬を用いて紫外線分解時の炭素・水素同位体分別を測定した。その結果、炭素・水素ともに紫外線照射により同位体的に重くなることがわかった。しかし、反応における紫外線波長や温度は調節することができなかったため、詳細な実験は次年度以降の課題として残った。 また、陸上熱水環境におけるバクテリアマットを構成する脂肪酸や直鎖炭化水素、ホパノイド炭化水素の水素・炭素同位体比をマットの色別に分析を行った。その結果、バクテリアマツト内で炭素同位体比が約33‰、水素同位体比で約310‰の幅広い分布を示し、シアノバクテリア、イオウ酸化バクテリア、水素酸化バクテリア、硫酸還元バクテリアなどの存在を示唆することができた。とくに炭素・水素同位体比2次元マッピングでは水素酸化バクテリア由来のC_<20:1>脂肪酸が同位体的に^<13>Cに極端に富んでおり炭素固定として逆TCA回路を用いていることや、Dに極端に不足しており水素の基質として水素分子を用いていることが推察できた。このようにバイオマーカーの多次元同位体比を測定することにより、バクテリア活動やそれらの代謝系が明瞭に区別できることを見出した。
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Research Products
(7 results)