2006 Fiscal Year Annual Research Report
ガラスや蛋白質などのフラストレートした系のエネルギーランドスケープと2次元分光
Project/Area Number |
15205005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷村 吉隆 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (20270465)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 賢得 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (30378533)
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Keywords | 2次元赤外分光 / 2次元ラマン分光 / 自由エネルギー面 / 量子ダイナミックス / 分子動力学 / ガラス状態 / マスター方程式 / 遅い緩和 |
Research Abstract |
本研究は、ガラスやタンパク質などの動的性質を特徴づけるため、広く用いられているエネルギーランドスケープを、分光学的な方法により直接観測する可能性を探ることにより、遅い緩和などのフラストレーション系の動力学を探求することにあった。この目的にために、ガラス転移温度点以下での自由エネルギー面を正確に描き事を可能とする多次元的ランダウ・ワンアルゴリズムの開発、遅い緩和を多次元分光シグナルとして捕らえるための新しいアルゴリズムである平衡・非平衡はハイブリット分子動力学シミュレーションアルゴリズムなどを開発し、これらの応用としてガラス転移温度以下でのマーカス理論の検証や、様々な分子性液体の2次元ラマン分光シグナルの計算なども行った。エネルギー面と多次元分光シグナルの関係を直接探るためには、自由度を落とした双極子液体のモデルを新たに導入し、様々な温度での自由エネルギー面を直接計算することにより、配置などの影響を詳細に調べた。その多次元分光シグナルを計算するにあたっては、全系が熱平衡に向かうようなマスター方程式を構築することにより、モンテカルロ法などでは不可能な領域である、極低温での遅い緩和現象を統計平均を取った形で求めることを可能にした。この方法を、多次元シグナルを計算するアルゴリズムに適用し、ガラス転移温度以下での多次元赤外分光シグナルを計算することに成功した。その結果、双極子の配置方法によらず、高温ではエネルギーランドスケープは2次関数型になるが、低温では配置により局所ミニマム構造などが異なること。また、通常の線形赤外分光では、局所ミニマム構造が異なっていても、緩和の形にはあまり変化がないのに対して、2次元赤外分光では、ミニマムに状態がトラップされる様を、2次元信号上の変化として捉えられることを、今回始めて示した。これらの結果は11本の原著論文と、1本の執筆中の論文にまとめられた。
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Research Products
(6 results)