2004 Fiscal Year Annual Research Report
自励振動ゲルを用いたナノデバイスの設計に関する基礎研究
Project/Area Number |
15205027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 亮 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (80256495)
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Keywords | 高分子ゲル / N-イソプロピルアクリルアミド / 刺激応答性高分子 / 自励振動 / ベローソフ・ジャボチンスキー反応 / 振動反応 / 非線形科化学 / インテリジェント材料 |
Research Abstract |
本研究では、心臓の拍動のように一定条件下で自発的な周期的リズム運動を行う新しい「自励振動ゲル」を開発した。すなわち、生体の代謝反応(TCA回路)の化学モデルにもなっている、循環する反応回路を持つベローソフ・ジャボチンスキー反応(BZ反応)をゲル内で引き起こし、その化学エネルギーを力学エネルギーに転換する分子設計を行うことによりゲルの周期的な膨潤収縮振動を生み出すことに成功した。この自励振動ゲルを利用することにより、自ら周期運動するマイクロアクチュエータ、自己拍動(蠕動)型マイクロポンプ、分子ペースメーカー、情報伝達素子など新しい分子シンクロ材料が設計可能になると考えられる。このような機能を備えた新しいマイクロ・ナノマシンの実現を目的とし、自励振動ゲルの微小化技術の確立とマイクロ・ナノ環境下での挙動解析を行い、材料システム構築に関する基礎的検討を行った。 微小化のための手段として、近年進歩が著しい半導体微細加工技術によりゲルを任意の形の微小サイズに成形加工する方法が考えられる。そこで我々は2つの方法で自励振動ゲルの微細加工を試みた。一つは、高分子鎖に光架橋部位を導入し、フォトマスクを用いた光リソグラフィにより任意の形にマイクロ加工する方法である。もう一つは、X線リソグラフィーによる3次元微細加工であり、この手法により実際に人工繊毛アクチュエータが作成された。表面に添加した微粒子等を輸送するマイクロ搬送システムなどへの応用が可能であると考えられる。 また、未架橋の自励振動高分子を用いることにより新しいナノ振動子の実現を試みた。高分子鎖のコイル-グロビュール振動は溶液の透過率振動として測定することができるが、基板上に固定化することにより、高分子一本鎖の周期的な伸縮振動がAFMを用いて観察されている。周期の制御、振動のon-off制御なども可能であり、周期的運動リズムを生み出す新しいナノ振動子として種々の分子マシンへの展開が期待される。 さらに、サブミクロンサイズの自励振動ゲル微粒子を乳化重合で作成することにより、ナノオーダーでの膨潤収縮振動を起こすことが可能である。これら自励振動型の高分子鎖やゲル微粒子を基板上にグラフト、あるいはアレイ化することにより、化学反応波の伝播と共に表面に添加した微粒子や細胞等を輸送するナノ搬送システムなど、新しい機能性表面を構築することができると考えている。
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Research Products
(7 results)