Research Abstract |
本研究は,近接場光学顕微分光法(SNOM-PL)によってInGaN/GaN系量子井戸のナノ領域での発光再結合過程を解明・制御し,ダイオード,レーザダイオード,新蛍光体の発光効率,波長域拡大などの特性を飛躍的に向上させることを目的としている。そのためには,三次元的な微小構造を利用した高効率発光素子や多色発光素子などを(1)作製し,(2)SNOM-PLによって明らかにされた基礎物性をフィードバックさせることによって研究を推進している.今年度は, (1)については,マイクロファセット(0001)面および{11-22}面のInGaN/GaN量子井戸からそれぞれ500nm,400nm発光する試料Aと580nm,430nm発光する試料Bの2種類の試料を設計し作製した。これらの発光を目視したところ,2つの発光色が混色されて見えるため,試料Aについては緑色がかった白色,試料Bについては白色に見えた。これをCIE色度座標上で表現すると,試料Aが(0.216,0.453),試料Bが(0.318,0.262)となり,蛍光体を使うことなく窒化物半導休だけでも白色発光が得られることを示している。 (2)については,原子間力顕微鏡(AFM)とSNOM-PLの複合化によって転位と非発光領域の相関や弱発光領域まわりでのポテンシャル揺らぎの存在をマッピングすることに成功した。すなわち,弱発光強度領域と強発光強度額域の境界付近の発光スペクトルを見ると,強発光強度領域における単峰性の発光スペクトルと異なり,高エネルギー側に肩やピークを持つスペクトル形状となっていることが分かった。このことから,弱発光領域,およびその近傍において,ポテンシャルエネルギーが高くなっており,キャリアの拡散方向や拡散長が制限され,その結果として非発光中心への捕獲確率が抑制されているものと考えられる。
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