Research Abstract |
触媒にはレアメタル類を含む多くの金属が利用されており,廃触媒からの有価金属の回収は,資源の有効活用につながるため,非常に重要な課題と考えられる.脱硫をはじめとする石油留分の水素化精製プロセスで使用される触媒はモリブデン,タングステンなどのIV族遷移金属とコバルト,ニッケルなどのVIII族遷移金属の硫化物がアルミナなどの多孔質酸化物に担持された状態にあり,直接脱硫では1〜2年,間接脱硫では7年程度でその性能が劣化し,使用済み触媒となる.この廃触媒には上記の遷移金属のほか,石油由来のバナジウムが付着しているため,これらの金属を回収する手法が提案されているが,その回収率は低く,新しい手法の開発が望まれている. 筆者らは,新しい廃触媒からの有価金属の回収法として,メカノケミカル(MC)法を提案する.この方法はMC処理と抽出処理の組み合わせからなり,環境に優しいプロセスであるのが特長である.本研究は,その原理を明確にするための基礎的実験であり,遷移金属硫化物と酸化カルシウムとのMC反応について検討した.廃触媒中に含まれる有価金属回収の基礎的実験として,遷移金属硫化物モデル試料と酸化カルシウムとのMC処理の効果と産物の各種溶媒による抽出率を調べた.その結果,MC処理により硫化モリブデンからモリブデン酸カルシウムが,硫化バナジウムからバナジン酸カルシウムが合成されることが明らかになった.また,生成したモリブデン酸カルシウムは水に,バナジン酸カルシウムは炭酸ナトリウム溶液に,それぞれ可溶であり,抽出溶液により選択的に遷移金属を抽出できることが確認された. 課題としては抽出率の向上とMC処理時間の短縮が挙げられ,プロセスの高効率化が望まれる.今後は,実用の廃触媒に対して本法を適用し,その効果を見極める.
|