2004 Fiscal Year Annual Research Report
食物連鎖理論の新展開:生物多様性を促進するフィードバック・ループ
Project/Area Number |
15207003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大串 隆之 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10203746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高林 純示 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10197197)
山内 淳 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (40270904)
石原 道博 大阪女子大学, 理学部, 講師 (40315966)
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Keywords | 間接効果 / 食物連鎖 / 生物間相互作用 / 形質の進化 / 植食性昆虫 / 間接相互作用網 / 群集構造 |
Research Abstract |
植食者の利用による植物の質的・形態的変化が、昆虫群集の相互作用ネットワークの多様化に貢献するという「間接相互作用網」の考え方を提唱し、これによって植食者の作用が昆虫群集の成立に果たす間接効果を解明するアプローチを確立した。 生物の性質の適応的な変化が個体群動態や群集動態の挙動に与える影響を、1捕食者-2被食者系について、数理モデルによる解析を行った。特に、捕食者が摂餌行動を最適化する一方で被食者が被食に対する防衛形質を進化させる場合、個体群動態の安定性や持続性に与える影響を明らかにした。 アブラナ科植物であるイヌガラシはコナガ幼虫の食害を受けた際に、その天敵であるコナガコマユバチを誘引する物質を生産し始める。一方、開花期のイヌガラシは蜜を摂取するアリによっても間接的な防衛効果を得ている。この場合、アリはコナガコマユバチに寄生されたコナガ幼虫も未寄生コナガ幼虫も区別なく捕食するため、アリはコナガコマユバチのギルド内捕食者であった。一方、コナガコマユバチは開花期のコナガに食害されたイヌガラセ株を避ける。これはコナガコマユバチによるギルド内捕食回避戦略であると考えられた。 和歌山県紀ノ川では、ヤナギ上の植食性昆虫群集はヤナギの質が最も高い春先に種多様度が高く、個体数も多かった。これらはヤナギの質が低下する夏には低下したが、ヤナギグンバイのみ、春に個体数が少なく、夏に増加するという逆のパターンを示した。ヤナギグンバイは個体数が多く、半数以上の葉がその食害を受けていた。食害葉は窒素量と含水率が低下した。そのことから、ヤナギグンバイの食害がヤナギの質の低下を介して他の植食者に間接的な効果を及ぼしている可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)