2003 Fiscal Year Annual Research Report
作物における塩ストレス障害の発現機構とその軽減対策
Project/Area Number |
15208002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三宅 博 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (60134798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 通夫 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (30343213)
谷口 光隆 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (40231419)
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Keywords | 塩ストレス / 活性酸素 / 苦土石灰 / 光酸化 / 根端 / 微細構造 / 水ストレス / 葉緑体 |
Research Abstract |
水耕栽培のイネにグリシンベタインを与えると、塩ストレスによる成長抑制と地上部のクロロシスが軽減された。また根端細胞の液胞化が促進され、地上部へのNaの移行が抑制された。根端を除去するとグリシンベタインの効果は失われた。したがって、グリシンベタインは根端細胞において液胞へのNaの蓄積を促進し、地上部へのNaの移行を抑制することにより障害発現を抑制すると考えられた。ポット栽培のイネについて、1ヶ月以上にわたる長期的な塩ストレスの影響を調べたところ、根に対する成長抑制は、地上部に可視障害が現れない限り植物体にとって致命的ではなく、塩ストレスは根に対する影響よりも葉に対する障害、特に葉緑体に対する影響が重要であると考えられた。塩ストレスと水ストレスの影響を比較したところ、葉緑体に対する障害は塩ストレスの方がはるかに顕著で、特にチラコイドに障害が現れるのが特徴であった。明暗条件でさまざまな塩濃度でイネを栽培し、葉組織の塩濃度と葉緑体障害との関係を調べたところ、塩濃度が高い場合でも暗条件下では障害は現れず、葉緑体障害は光に依存して発生する光酸化であると考えられた。そこで活性酸素阻害剤の効果を調べたところ、多様な活性酸素種に効果のあるアスコルビン酸と、ヒドロキシルラジカルの阻害剤である安息香酸が有効であった。また塩処理を行った葉組織の酵素活性を調べたところ、S0D活性が著しく上昇していたが、APXは変化せず、葉組織の過酸化水素濃度は高まると考えられた。したがって、葉緑体障害は過酸化水素と、それから派生するヒドロキシルラジカルによって引き起こされると推察された。共存イオンによる障害軽減効果を調べたところ、Mg^<2+>とCa^<2+>が有効であり、両者の混合物である苦土石灰も有効であった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Yamane, K., et al.: "Differential effect of NaCl and polyethylene glycol on the ultrastructure of chloroplasts in rice seedlings."Journal of Plant Physiology. 160. 573-575 (2003)
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[Publications] Mitsuya, S., et al.: "Relationship between salinity-induced damages and aging in rice leaf tissues."Plant Production Science. 6. 213-218 (2003)
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[Publications] Mitsuya, S., et al.: "Light dependency of salinity-induced chloroplast degradation."Plant Production Science. 6. 219-223 (2003)
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[Publications] Yamane, K., et al.: "Bundle sheath chloroplasts of rice are more sensitive to drought stress than mesophyll chloroplasts."Journal of Plant Physiology. 160. 1319-1327 (2003)
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[Publications] Taniguchi, Y., et al.: "Strictness of the centrifugal location of bundle sheath chloroplasts in different NADP-ME type C_4 grasses."Plant Production Science. 6. 274-280 (2003)
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[Publications] Taniguchi, Y., et al.: "Differentiation of dicarboxylate transporters in mesophyll and bundle sheath chloroplasts of maize."Plant Cell Physiology. 45. 187-200 (2004)
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[Publications] 三宅 博: "植物生理学-分子から個体へ"三共出版. 224 (2003)