Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中坊 徹次 京都大学, 総合博物館, 教授 (20164270)
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
中山 耕至 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助手 (50324661)
益田 玲爾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60324662)
上田 拓史 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教授 (00128472)
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Research Abstract |
1.前年度までに安定同位対比を用いて有明海筑後川河口域におけるスズキ稚魚の遡上回遊生態を明らかにしたが,今年度はさらに耳石日周輪による日齢情報を加え,個体ごとの成長率と回遊生態との関係を調べた.その結果,3月においてはより高日齢かつ高成長の個体が上流まで遡上しているが,4月においては同様の傾向は認められなくなることが明らかとなった. 2.2005年3月から8月にかけて,筑後川河口域に率いて3日から1週間間隔で水温・塩分・濁度・クロロフィル量等の物理環境測定,ネットによる仔稚魚・動物プランクトン採集,懸濁粒子・プランクトン等の安定同位体比分析を行った.調査日は大潮時に加え,小潮,中潮,出水時などさまざまな条件に設定した.その結果,河口域の物理環境がスズキ仔稚魚の生残に与える影響や,懸濁粒子および生物の安定同位体比の潮位差に対応した動態などが明らかとなった. 3.筑後川河口域に加え,同じ有明海に流入する熊本県の緑川および八代海に流入する球磨川河口域においても毎月物理環境測定,安定同位体比測定および生物採集を行い,筑後川河口域における「大陸遺存的生態系」の特徴の解明を目指した.さらに,2005年8月には韓国の黄海側沿岸河川においても調査を行った.結果として,筑後川河口域は高い濁度とフェオフィチン量によって特徴づけられ,そのことが多くの有明海特産種仔稚魚の生息と関わっている可能性が示唆された. 4.アリアケヒメシラウオ,エツなど有明海特産種仔稚魚の筑後川河口域における生態調査を行い,潮汐に対応した鉛直移動など,特産種仔稚魚の感潮域での滞留・生残プロセスの一部が解明された. 5.多数の有明海産スズキについてミトコンドリアDNAおよび核DNA情報を調べたところ,個体ごと,地域ごとに遺伝的特徴のばらつきが大きく,有明海産スズキを個体単位で確実に同定する形質は見つからなかった.しかし,程度の大小はあるもののほぼすべての個体においてタイリクスズキの遺伝的影響が確認されたため,有明海産スズキを独自の個体群としてとらえ,なんらかの分類学的名称を与える必要性が認識された.
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