2004 Fiscal Year Annual Research Report
成人生体肝移植における移植後門脈圧亢進と肝内循環病態の解明・治療に関する臨床研究
Project/Area Number |
15209042
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木内 哲也 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40303820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 哲也 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40314009)
吉岡 健太郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教授 (60201852)
安藤 久実 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60184321)
尾池 文隆 京都大学, 大学院・医学研究科, 助手 (20324650)
田中 紘一 京都大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20115877)
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Keywords | 成人成体肝移植 / 低重量移植肝 / 門脈圧亢進 / 肝微小循環 / 門脈血流量 / 門脈コンプライアンス / 脾動脈結紮 / 門脈下大静脈シャント |
Research Abstract |
前年度までの研究結果から、生体肝移植における低重量移植肝の臨床的危険が明らかとなり、肝硬変によって増加した腹腔内血流が相対的低重量肝に流入することに起因する移植後早期の門脈血流圧上昇が、移植肝に非可逆的障害を与え、遷延する病態を形成する可能性が明らかとなった。移植後早期の門脈圧亢進は、流入する門脈血流量ばかりでなく、移植肝の軟らかさ(門脈系コンプライアンス)によって大きく規定されることも明らかになったため、当該年度においては、これらの病態の発生を回避する臨床的手法の開発に焦点が移された。 移植肝門脈系コンプライアンスを有意に下げる因子として、提供者の年齢(40歳を堺に有意差)と手術時の移植肝温阻血時間(40分を堺に有意差)が明らかになったが、生体肝移植が提供者の自発的意志に基づく治療様式であるという性格上、提供者の年齢を制御することは困難で、まず潜在的な組織病変をより厳密に除外すべく、術前評価における肝生検の閾値を下げるとともに、移植術中における温阻血時間(血管吻合時間)を30分以内に抑える努力がなされた。 さらに、相対的低重量肝あるいは再灌流直後に門脈圧亢進(20mmHg以上)を示す症例を対照に、門脈圧亢進に起因する組織傷害を回避する手段として、(1)脾動脈結紮(SAL:膵上縁の起始部付近)と(2)部分的門脈下大静脈シャント造設(PPCS:非吻合門脈枝を使用)を行った。SALにおいては門脈血流量の低下をもたらさずに門脈圧の低下が得られ、これが術後早期にも持続して合併症状や予後の改善に結びつくことを示した。PPCSにおいても同様に門脈減圧と減黄、腹水吸収の促進が得られることを示した。PPCSは予後の改善に結びつき、また腹水喪失に伴う医療費の縮減にも繋がったが、肝再生速度・蛋白合成速度が低下する傾向が認められ(ただし術後の全身状態回復とQOLは良好)、今後の課題を残している。(794字)
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