2003 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲的神経新生誘導技術の開発と実験的損傷脳への応用
Project/Area Number |
15209048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
柳本 広二 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (50281689)
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Keywords | 神経新生 / 拡延性抑制 / 内在性神経幹細胞 / 内在性神経前駆細胞 / 再生医療 / 再生医学 |
Research Abstract |
細胞分裂により、新たな神経細胞を生み出すことのできる神経前駆(幹)細胞は、ヒトをも含めた哺乳類脳内に成長発達後も残存しており、常時、一部の領域において新生神経を生産していることはすでに知ちれている。また、それらの内在性神経前駆細胞を活性化させ、神経細胞の産生、増殖を促す刺激として、脳虚血負荷あるいは、持続的てんかん発作誘発刺激が報告されている。しかしながら、これら両刺激は直接的に脳に傷害を与えるため、脳損傷修復を目的とした内在性神経幹細胞の活性化、いわゆる脳再生医療への応用は困難である。脳における局所の一過性可逆性脱分極現象である拡延性抑制、spreading depression(SD)は正常脳に対しては、無害であることが知られ、さらに、これら内在性神経前駆細胞を刺激する脳虚血あるいは、てんかん発作といった両病態に共通する随伴堤象である。本年度は、脳虚血あるいは、てんかん発作誘発刺激ではなく、SD単独刺激が内在性神経前駆細胞を活性するが否かを検討した。8-9週令雄性Sprague-Dawleyラットを用いて、化学的にSDを誘発した。具体的には、体内埋め込み型浸透圧ポンプ内に充填した高濃度塩化カリウムをカテーテルにて誘導し、脳皮質(somatosensory area)内に48時間にわたり持続(1 microl/h)注入した。ポンプ装着中に脳皮質においてモニターした直流電位においては、連続的にSD波が生じていいることが確認された。脳内塩化カリウム持続注入による連続的SD刺激終了の1、3、6、12日後、深麻酔下に脳を取り出し、前頭葉側脳室・脳室壁下層(forebrain subventricular zone, fSVZ)に存在する神経前駆細胞を含む細胞群の動態に関して免疫組織化学的手法を用いて観察した。その結果SD刺激終了時点より、1-3日後には、分裂活性の指標であるPCNA(proliferating cell nuclear antigen)の免疫活性を示す細胞数および細胞分裂像(mitotic figures)が、また、3-12日後にはポンプ装着後に細胞分裂を経た指標であるBrdU陽性細胞数がそれぞれ有意に増加した。さらに、SD刺激の6日後にはBrdU免疫活性と幼若神経細胞の指標であるbeta-tubulin IIIに対する免疫活性を併せ持つ細胞(新生神経細胞)数が有意に増加した。以上の結果より、SD刺激はfSVZに存在する内在性神経前駆細胞を刺激し、同領域での新生神経の産生及び増殖を促すことが明らかとなった。
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[Publications] Yanamoto H, Tohnai N, Nagata, Nakano Y, Xue J-H, Sakata N, Kikuchi H: "Ectopic neurogenesis following recurrent waves of spreading depression in adult rat brain"Soc.Neurosci.. 29. 563.8 (2003)
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[Publications] Yanamoto H, Tohnai N, Nishimori K, Xue J-H, Sakata N, Kikuchi H, Na: "Cortical spreading depression can evoke extensive neurogenesis in adult rat brain"J.Cereb.Blood Flow Metab.. 23. S539 (2003)
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[Publications] Yanamoto H, Nagata I, Niitsu Y, Xue J-H, Tohnai N, Zhang Z, Kikuchi H: "Evaluation of MCAO stroke models in normotensive rats : Standardized neocortical infarction by the 3VO technique"Experimental Neurology. 182. 261-274 (2003)
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[Publications] Xue J-H, Yanamoto H, Nagata I, Zhang Z, Kikuchi H: ""Maturation Phenomenon in Cerebral Ischemia V" ed.by A.M.Buchan U.Ito F.Colbourne T.Kuroiwa I.Klatzo"Springer. 333-334 (2004)
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[Publications] Yanamoto H, Nagata I, Xue J-H, Zhang Z, Murao K, Iihara K, Kikuchi H: ""Maturation Phenomenon in Cerebral Ischemia V" ed.by A.M.Buchan U.Ito F.Colbourne T.Kuroiwa I.Klatzo"Springer. 321-322 (2004)