2004 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲的神経新生誘導技術の開発と実験的損傷脳への応用
Project/Area Number |
15209048
|
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
柳本 広二 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (50281689)
|
Keywords | 神経新生 / 拡延性抑制 / 内在性神経幹細胞 / 内在性神経前駆細胞 / 再生医療 / 再生医学 |
Research Abstract |
成長発達後の脳内において新たな神経細胞を生み出すことのできる神経前駆(幹)細胞は、ヒトをも含めた哺乳類脳内に残存しており、持続的に脳の特定の領域へのみ新生神経を生産し続けている。そして、この持続的神経新生は、長期のてんかん発作誘発刺激や脳虚血性刺激により顕著に活性化し、局所での新生神経数が増加することはすでに知られている。これまでの本研究により、これらの脳傷害を伴う刺激を用いずとも、長期にわたる拡延性抑制(Spreading depression, SD)による刺激が、Sprague-Dawleyラット脳室壁下層において、てんかん発作や虚血性刺激と同様に内在性神経前駆細胞を活性化させることを見出した。本年度は、さらにSD刺激が、前脳脳室壁下層(forebrain subventricular zone, SVZ)のみならず、その他の脳領域、すなわち、通常は、新生神経細胞が出現し得ない基底核や脳皮質においても、細胞分裂後のマーカーであるBrdUと幼若神経細胞(early committed neurons)のマーカーであるbeta-tubulin IIIに二重にラベルされる細胞(異所性新生神経細胞)が多数出現することを見出した。長期SDによる脳傷害の有無を検討した結果、これらの脳領域における。成熟神経細胞(NeuN陽性細胞)数や神経突起(Bodian's silver stain)の染色密度には、刺激前と比して変化なかった。すなわち、長期SDの誘発により、正常脳に神経損傷が生じ、そのことが、これらの異所性新生神経細胞産生に寄与したのではないということを証明した。また、長期SD刺激後の急性期には、アポトーシスを示すTUNEL陽性細胞の出現がないことも確認した。さらに、これらの異所性変化が長期SDによるものであることを証明するために、SD波出現に対する抑制作用を有するNMDA受容体阻害剤であるMK-801をSD誘発モデルに前投与したところ、これらの内在性神経活性化は消失した。すなわち、長期SDや塩化カリウムの局所持続的注入による脳傷害ではなく、正常脳を伝播するSD波刺激こそが内在性神経前駆細胞を活性化させ、異所性新生神経様細胞を出現させていることが明らかとなった。
|
Research Products
(5 results)