2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的手法を用いた変形性関節症の病態解明と治療法の開発に関する戦略的研究
Project/Area Number |
15209049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 耕三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60126133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (30344451)
川口 浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40282660)
高取 吉雄 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (40179461)
鄭 雄一 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (30345053)
石原 一彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90193341)
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Keywords | 変形性関節症 / ノックアウトマウス / cyctatin10 / ゲノム / 再生医療 / 軟骨 / SOX |
Research Abstract |
1)Reverse geneticsからの病態解明へのアプローチ:我々自身がクローニングした軟骨特異的新規遺伝子であるcystatin 10 (Cst10)の遺伝子欠損マウス(Cst10KO)を作出した。Cst10KOでは成長板の肥大軟骨細胞層における石灰化障害が見られたが、成長障害などの生理的な異常は見られなかった。一方、我々が作成した膝関節への力学的負荷による変形性関節症(OA)モデルを負荷したところ、明らかな骨棘形成の抑制が認められた。また、1年間飼育したことろ、老化に伴う膝蓋靭帯やアキレス腱の石灰化が抑制された。以上より、Cst10は、変形性脊椎症などその骨棘形成が臨床上問題となる病態において有効な治療の標的分子になる可能性が示された。 2)Forward geneticsからの病態解明へのアプローチ:COL9A3遺伝子全領域にわたる高密度マッピングを行ない、計62箇所の多型を同定した。これらについて、膝OA患者499例、対照健常人304例について相関解析を行ったところ、intron 25内のくり返し配列(repeat)多型が最も有意な相関を示し(P=0.001)、repeatが1つの場合は2つの場合に比べてOAのリスクが有意に高いことが示された。Luciferase活性およびゲルシフトアッセイによって、このCOL9A3のrepeatはSOX9のpolymorphic enhancerであり、膝OA発症の背景にはSOX9によるCOL9A3の発現誘導が関与することが明らかになった。 3)軟骨再生のための基礎検討:我々が確立したII型コラーゲンプロモーター-GFP導入マウス骨髄幹細胞培養系を用いて、軟骨細胞に分化させるための最適条件の決定に成功した。最も強力なシグナルは、SOX9、SOX5、SOX6 (SOX trio)の組み合わせであり、発現プラスミドを、軟骨分化能を全く持たない細胞株、ヒト骨髄間葉系幹細胞、そしてより分化したヒト成人皮膚線維芽細胞に導入したところ、どの細胞からも軟骨マーカーの誘導と組織学的に豊富な軟骨基質の産生を認めた。一方、これらの正常ヒト細胞培養系においてSOX trioの導入は軟骨の肥大化および骨への分化マーカーに対してはむしろ抑制的に働き、永久軟骨として機能すべき関節軟骨などの再生医療のための画期的な手法となると考えられた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yu Kashizuka: "Cystatin 10, a novel chondrocyte-specific protein, may promote the last steps of the chondrocyte differentiation"Journal of Biological Chemistry. 278. 48259-48266 (2003)
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[Publications] Takehiro Matubara: "A new technique to expand human mesenchymal stem cells using basement membrane extracellular matrix"Biochem Biophy Res Commun (BBRC). 313. 76-84 (2004)
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[Publications] 川口 浩: "骨軟骨再生研究の分子生物学的展望"Molecular Medicine. 40(6). 702-710 (2003)
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[Publications] 川口 浩: "骨髄間葉系細胞を用いた骨再生"関節外科. 22(10). 1250-1256 (2003)