2005 Fiscal Year Annual Research Report
難治性疼痛発現におけるATP受容体を介するグリアーニュロン相互作用の役割
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15209051
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Research Institution | KYUSHU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
井上 和秀 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (80124379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 誠 九州大学, 薬学研究院, 助手 (40373394)
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Keywords | ATP / P2X4 / ミクログリア / BDNF / アニオン濃度勾配 / GABA |
Research Abstract |
我々はこれまでに神経因性疼痛動物モデルを用いて、脊髄ミクログリアに発現するP2X4受容体からのシグナルがメカニカル・アロディニアを引き起こすのに必須であることを明らかにした(Nature 424,778-783,2003)。しかし、P2X4刺激あるいはミクログリアの活性化がなぜ神経因性疼痛を引き起こすのかは不明であった。本年度は、この疑問を解明しようとした。まず、ATP刺激ミクログリアを正常ラットの脊髄内に投与することにより5時間目前後から顕著なアロディニアを発症させた。このラットから脊髄スライスを調製し電気生理実験を行った結果、脊髄後角第I層ニューロンでは陰イオンに対する逆転電位が脱分極側に移動していた。このことは、γ-アミノ酪酸(GABA)によって活性化される電流の方向が正常では過分極であるが、脱分極へと逆転する事を意味している。事実、脊髄第I層後角ニューロンの約30%程度でGABAにより脱分極が観測された。同様な現象はアロディニアを呈する末梢神経損傷後のラットでも認められた。また、脳由来神経栄養長因子(BDNF)を脊髄内に投与することによっても同様な知見が得られ、BDNFとその受容体TrkBの間の情報伝達を機能阻害抗体で阻害すると、アロディニアとEanionの変化とを阻止できた。加えて、ATPで刺激するとミクログリアからBDNFの放出が起こり、この放出はP2X4阻害薬や、BDNF干渉RNA処理によって抑制された。これらの放出抑制方法で、ミクログリア脊髄内投与による痛み発生とEanionに対して示す効果が抑制された。これらの結果は、活性化型ミクログリアに発現するP2X4受容体の刺激がBDNF放出を引き起こし、そのBDNFが脊髄後角ニューロンの陰イオン濃度勾配を変化させ、抑制性入力を興奮性入力に変えて、アロディニアを発現させることを示唆する。
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Research Products
(6 results)