2005 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト・アラブ共和国 アブ・シール南丘陵遺跡の保存整備計画立案のための研究
Project/Area Number |
15251001
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 作治 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (80201052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 二郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70186849)
中川 武 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30063770)
柏木 裕之 早稲田大学, エジプト学研究所, 講師 (60277762)
西浦 忠輝 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 教授 (20099922)
中井 泉 東京理科大学, 理工学部, 教授 (90155648)
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Keywords | 古代エジプト / アブ・シール南 / 新王国時代 / エジプト学 / 日乾煉瓦遺構 / 石造建造物 / 保存修復 / 整備計画 |
Research Abstract |
平成17年度にアブ・シール南丘陵遺跡の保存修復案策定のために実施した調査・研究の成果概要を報告する。 国内では、5月にアブ・シール南丘陵遺跡・保存整備検討会を開催し、アブ・シール南丘陵出土遺構の保存計画案と、ヴァーチャル・リアリティの活用について検討した。 エジプト現地では、8月から9月中旬にかけて調査が実施された。 まず、遺跡の保存環境理解のために、温度、湿度、風速、風向、日照量、降雨量の計測を行い、自然環境が遺跡に及ぼす影響に関する貴重なデータを得ることができた。 次に、遺構の保存整備計画のための試験的作業を、丘陵頂部の日乾煉瓦遺構および丘陵斜面の石積み遺構で実施した。過去2ヵ年にわたって保護・保全措置がとられた日乾煉瓦遺構では、僅かであるが降雨による損傷が認められ、補修を行った。石積み遺構では、劣化を防ぐために、遺構の上面のみに砂を敷き詰める「キャッピング」の試験を実施した。遺構の東側に小型のレプリカを建設し、4種類のパターンで覆う素材を用意して、効果を比較することにした。次回調査まで曝露試験を行い、結果を見た上で方策を検討する。丘陵斜面中腹の岩窟遺構では、内部の環境を把握するために温湿度計を設置し、内部の亀裂の進行を把握する目的で、各亀裂に石膏による絆創膏を塗布した。 考古学、建築史学の分野でも大きな成果を挙げることができた。石積み遺構の西端部の発掘により、遺構の全体像が明らかとなった。石積み遺構南側での発掘では、石積み遺構造営から中王国時代の祭祀活動までの様相が徐々に明らかとなり、丘陵全体の歴史的変遷を知る手掛かりとなった。丘陵斜面の発掘では、石造建造物の建材、レリーフ片など、復元研究を大きく促進させるデータが得られた。 来年度は科学研究費補助金の最終年度であり、これまでの成果に基づきアブ・シール南丘陵遺跡の包括的な保存計画案を提示する予定である。
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Research Products
(28 results)