Research Abstract |
現地調査に入る直前までエジプト政府からの発掘許可がおりなかったので,今年度は発掘調査を断念した。そこで,各班は以下の活動を行った。 1.考古班 平成17年度までに発掘で出土し,現地の考古局に保管してある遺物について,整理・分析を行った。土器類については,クリーニングおよび接合の済んだものから,完形品あるいは完形に近いもの24点を,つぎに特徴的な形状や文様を有するものを選び,トータル32点選択した。内訳は,壷13点,甕2点,椀16点,水差し1点である。これらを,写真撮影後,実測・図化した。現地のニューバレー博物館に保管されているハルガ近郊のオアシスで出土した土器類と,比較検討した結果,現在までにこの遺跡で出土した土器類は,おおむねローマ期とりわけコプト期に属すると判断された。その他の遺物のうち,特徴的なファイアンスビーズ1点,スラグ11点,ガラス破片6点の写真撮影を行った。 2.保存科学班 収蔵庫は,1年に1度しか開く機会がないので,保存状態を調査するために,収蔵庫内に温度・湿度をモニタリングする計測器を設置した。 3.デジタルアーカイブ班 デジタルアーカイブを担当する班は,神殿の3次元記録データの解析をすすめ,さらに高精度化を行い,今まで存在しなかった神殿平面図の作成を試みた。 4.土壌班 土壌班は,今まで採取したサンプルの分析から土壌形成過程を推定して環境復元を試み,その結果を学会発表した。 5.GIS班 これまでの測量,探査,地表観察結果および発掘結果をGIS上で統合することによって,遺跡の全体像の把握に役立つことを示し,学会で発表した。 最終年度にあたるので,報告書の作成を行った。さらにこの成果を世界に発信するために,別途,英文の「El-Zayyan2003-2006」という調査報告書を発行した。
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