2005 Fiscal Year Annual Research Report
海低洞窟生態系をモデルとした地球生命史の進化古生物学的研究
Project/Area Number |
15253008
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
加瀬 友喜 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 室長 (20124183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 晃寿 静岡大学, 理学部, 助教授 (20260581)
鈴木 雄太郎 静岡大学, 理学部, 助手 (50345807)
狩野 泰則 宮崎大学, 農学部, 助手 (20381056)
田吹 亮一 琉球大学, 教育学部, 助教授 (60155231)
千葉 聡 東北大学, 大学院, 助教授 (10236812)
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Keywords | 海底洞窟 / インド・太平洋 / 古環境 / 軟体動物 / コハクカノコ科 / 生物地理 / 進化 / 初期発生 |
Research Abstract |
1.後期完新世の海洋環境変遷を解明するため,伊江島の海底洞窟"大洞窟"のコア試料の見いだされた軽石層(大洞窟軽石と命名)の層位を検討した。その結果、大洞窟軽石の上限年代はAD640±80年であり,未知の火山砕屑物であることが明らかとなった。 2.海底洞窟のコハクカノコ科を含むアマオブネ上目の水棲分類群約30種の成体標本の電顕による蓋の形態を観察した。その結果(1)ほぼ全ての種および個体に幼生時の蓋が保存され、(2)幼生の蓋は発生様式ごとに異なる形態的特徴をもつことを見いだした。本研究は蓋を用いた初めての発生様式研究例であり、老成個体等においても発生推定できる新たな手法である。 3.インド・太平洋の多数の海底洞窟より得た数千のコハクカノコ科貝類標本を検討し、4新属5新種を見いだし、既知種についても分類学的再検討を行った。各種の現生個体群の地理的分布・化石記録を調査し、さらに原殻の形態比較により初期発生様式の推定し、分布範囲と長期幼生期の有無との対応を検討した。その結果、これら洞窟性貝類の種はプランクトン食浮遊幼生期の有無にかかわらず、海洋島も含めたインド・太平洋島嶼に極めて広く分布することがわかった。ただし、種内の地理的形態変異は、幼生期がないかあるいはごく短いと考えられる種において顕著であった。種多様性の最も高い地域は東南アジアで、そこから離れるに従い種数の低減が見られた。大西洋各地の洞窟サンプルからは本科の貝類は見つかっていない。最古の化石はパリ盆地漸新世の海底洞窟堆積層から知られ、第四紀には太平洋の各地で発見されている。一般に、海底洞窟棲生物は分散能力が低く、プレートの移動によってのみ移動可能であると考えられているが、これは不十分なサンプリングによるもので、コハクカノコ科貝類の時空分布は浅海サンゴ礁域の明所の生物の分布様式と全く同じ特徴を示すことが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)