2006 Fiscal Year Annual Research Report
フタバガキ科の種多様性創出と維持に及ぼす繁殖様式の影響
Project/Area Number |
15255005
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山倉 拓夫 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10089956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 助教授 (40274344)
名波 哲 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (70326247)
原田 光 愛媛大学, 農学部, 教授 (40150396)
大久保 達弘 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (10176844)
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Keywords | 熱帯雨林 / フタバガキ / 種多様性 / 分集団化 / ニッチ分化 / 遺伝的浮動 / サラワク / 大面積調査区 |
Research Abstract |
フタバガキ科樹木の種多様性の創出と維持に及ぼす繁殖様式の影響を明らかにすることを目的として、マレーシア、サラワク州ランビル国立公園の熱帯雨林において、以下の研究を実施した。 1)フタバガキ科の地形ニッチ解析:大面積調査区データベースを用いて、フタバガキ科を含む788種の地形ニッチの解析を行った結果、88%の種で地形と分布の間に有意な関係が見られた。地形ハビタット変量の平均値の差を種間ニッチ距離と定義したとき、フタバガキ科の種間ニッチ距離は全種間の平均ニッチ距離よりも有意に大きく、フタバガキ科でニッチ分化が特に顕著であることがわかった。 2)リュウノウジュの遺伝構造解析:ミツバチ媒の巨大高木リュウノウジュ(Dryobalanops aromatica)について,調査区内の胸高直径30cm以上の全403個体からDNAを採取し、マイクロサテライトマーカーによる遺伝解析を行った。個体間の遺伝距離を用いたクラスター解析により、個体群は5つのグループに分類された。いずれのグループも空間分布に偏りは見られず、空間的遺伝構造は不明瞭であった。一方,同属のナガバリュウノウジュ(Dryobalanops lanceolata)について、胸高直径5cm以上の全156個体を同様に調査したところ、空間的に隔たった部分集団間で遺伝的組成が異なることが示された。 3)リュウノウジュの花粉流動:4個体の母樹の直下より、2005年に発生した実生を各100〜200個体採取し、マイクロサテライトマーカーを用いて花粉親を決定した。リュウノウジュの他殖率は0.72〜1.00と他のフタバガキ科樹種と似た値であった。また,花粉移動距離の平均値は、179.6〜355.7mと長く、花粉移動によって広い範囲で遺伝子流動が起こってきることが示された。このことがリュウノウジュの不明瞭な遺伝構造をうむ要因の一つであると考えられた。
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Research Products
(2 results)