2005 Fiscal Year Annual Research Report
湿潤熱帯・マメ科早生樹造林地帯における土壌酸性化メカニズムの解明と発現予測
Project/Area Number |
15255014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 誠一 京都大学, 農学研究科, 教授 (10346033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 博清 京都大学, 農学研究科, 教授 (60109048)
神崎 護 京都大学, 農学研究科, 助教授 (70183291)
田中 永晴 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 研究グループ長 (60353760)
金子 隆之 京都大学, 農学研究科, 助手 (20233877)
石塚 成宏 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (30353577)
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Keywords | 湿潤熱帯 / 土壌酸性化 / マメ科早生樹 / 産業造林 / Acacia mangium / 物質循環 / 養分プール / 森林生態系 |
Research Abstract |
インドネシア、スマトラ島のアカシアマンギウム(アカシア)植林地を対象フィールドとして以下の研究活動を行った。 1)マメ科樹種の造林に伴う土壌酸性化気機構仮説のうち、「マメ科樹木による窒素固定→高窒素リターの供給→剰硝酸の生成とそれによる塩基類の土壌からの溶脱→酸性化」仮説における伐採収穫インパクトの影響強度を評価するため、2年間バイオマス、リターフォール、林内雨、樹幹流などの調査を継続してきたアカシア9年生林分を2005年8月に伐採し試験区を設定した。収穫残渣投入に伴う養分供給と溶脱を明らかにするため、リターバックの設置、パンライシメータ法によるリターからの養分放出量観測、イオン交換樹脂埋設法による土壌中養分フラックスの観測、ポーラスラスカップ埋設による土壌溶液変動の観測を開始した。更に下刈りの強度の違いによるバイオマスへの養分保持能の違いを評価するため、最少除草区と潔癖除草区の2つの試験区を設定し各区における養分動態比較を上記手法により開始した。 2)8および9年生アカシア林に設けた固定試験地において林内雨、樹幹流の観測を継続した。林内雨の各溶存成分濃度はいずれも乾期の直後の降雨で高い値が観測された。雨期のNH^4、Mg^<2+>、NO_3^-の濃度は他のイオンに比べて低い傾向を示した。また、K^+とCl^-は年間を通して、ほぼ同じ変動傾向を示した。各イオン濃度の年平均値を樹幹流と林外雨で比較すると、NO_3^-以外は大きな差はみられなかった。NO_3^-は樹幹流の濃度が一番低く、次いで林内雨であり、林外雨が一番高かった。NH_4^+を除く陽イオンは林外雨よりも林内雨・樹幹流で高い値となったが、中でもK^+は10倍以上の差が見られた。林内雨の各成分負荷量の季節変動は乾期の後に多い成分と雨期に多い傾向がある成分の二つのパターンになり、K^+、Cl^-、NH_4^+、NO_3^-、Pは前者に、Ca^<2+>やMg^<2+>は後者となった。 3)森林林床の堆積有機物層から生成する溶存有機物(以下DOM)は土壌中の養分の溶脱に無視できない影響を及ぼしていると考えられる。このため、熱帯における重要な産業造林樹種であるアカシア、ユーカリ、マツのリター層で生成されるDOMの物性を指標するその光学的特性について比較検討し、アカシアアカシアのリターが高分子で難分解性の画分を多量に含むDOMを供給していること、一方、ユーカリの分解初期のリターから生成するDOMはフェノール様物質などリグニン由来以外の低分子の芳香族物質を多量に含むと予想されるなど、早生樹間でもDOMの生成機構とその物質論敵特徴には大きな違いがあることを明らかにした。 4)アカシアの植栽と収穫の繰り返しによる塩基類の持ち出しが土壌の酸性化を招く重要な要因であり、同時に、収穫で系外に持ち出される塩基類のかなりの部分が樹皮に含まれていることを明らかにしてきた。このため未利用資源であり多くの塩基類他養分を含有する樹皮を林地へ還元することで土壌の酸性化・貧影響化を抑制できると考えられた。このため本年度はアカシア樹皮を炭化物として調製し、その酸性矯正能、養分供給・保持能に関する基礎的検討を行った。その結果、アカシア樹皮、特に高温(800℃)で焼成した内樹皮炭は極めてpHが高く(13.0)、多量の塩基を含有しており土壌改良効果が高いことが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)