2004 Fiscal Year Annual Research Report
タイ国におけるエビ養殖業と沿岸環境の実態に関する調査研究
Project/Area Number |
15255017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒倉 寿 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50134507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 光彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50178810)
小河 久朗 北里大学, 水産学部, 教授 (20005656)
河野 博 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教授 (90234707)
馬場 治 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教授 (40189725)
古谷 研 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30143548)
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Keywords | タイ / 沿岸 / マングローブ / エビ養殖 / 魚類 / シャム湾 / アンダマン海 / 微小地形 |
Research Abstract |
1.シャム湾側のナコーン・シータマラート県パックパナン湾において、魚類群集の調査を行った。調査は、沿岸のマングローブ林が保全されている地域と、エビ養殖池の建設によってマングローブ林が失われている地域の比較という視点で行ったが、その結果、両地域で、採集された魚の個体数密度に違いはなかったが、沿岸のマングローブが保全されている地域で、明らかに種類数が多かった。この結果は、マングローブ林の存在が、周辺の沿岸水生生物の多様性に影響を与えている可能性を示唆するものである。今後は、エビ養殖池の存在が多様性に与えている影響について検討する必要がある。また、他地域でも同じような現象が見られるかどうかについて,事例的な解析も必要と思われる。 2.アンダマン海側のトラン県シカオでカニ類を中心に、マングローブ林内の生物の分布を調べた。その結果、マングローブ林内で裸地に近い比較的開けた微小地形や、水路の狭まった地点などでは生物の分布が異なり、安定同位対比の分析により、それらの生物の食性も異なる可能性が示された。このことから、マングローブ林内の微小地形の存在が生物多様性に関係しているものと推測された。 3.パックパナン湾の漁業実態について調べたところ、漁業の多くはエビを捕獲するための漁業であった。今後は、エビに絞って、養殖魚との競合関係等、漁業経済学的な調査を行うべきものと考えられた。 4.エビ養殖池の水質管理システムを、より環境への影響の小さな、閉鎖式に変更した業者について、その変更の動機を従来からの調査データに基づいて解析したところ、その多くは疾病を避け,安定的な生産を可能にするために行われていた。このことから、エビ養殖業者は、安定的な生産が、将来見込まれるという見通しがあれば、短期的な生産の低下を受け入れることが示された。本研究成果はFisheries Science誌に掲載予定である。
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Research Products
(1 results)