Research Abstract |
本年度は,暖季放牧地(WSP)と寒季放牧地(CSP)における放牧ヤクの採食量,採食植物,採食行動とパドック内行動位置の違いを明らかにすることを目的として調査を行った。 出現種数は,WSPでは24属37種,CSPでは30属44種で,いずれもP.fruticosaが優占種であった。WSPでは19種,CSPでは16種の草本の採食が確認された。上位6種(属)の採食割合はWSPでは74.1%で,CSPでは84.7%であった。 ヤクの採食植物種割合と草地植生構成植物種相対優占度との間にWSP(r=0.909,p<0.0001)とCSP(r=0.934,p<0.0001)で,ともに高い有意な相関が認められた。しかし,採食植物各種の割合とPreference index(WSP:r=0.184,およびCSP:r=0.188,p>0.05)間の相関は低かった。 採食量はWSPでは5045g/head/day,CSPでは4274g/head/dayで,体重当たり採食量はWSPがCSPよりも多かった(p<0.05)。 放牧行動軌跡をGPSにより測定した。夜間繋留パドックゲートからの平均距離は,WSPが449.2m,CSPが334.2mであった。 ヤクの採食行動では,パッチ当たりバイト数,パッチ当たりFS数,パッチ内歩数,パッチ内バイト速度はWSPがCSPよりも有意に大きかった(p<0.001)。パッチ間歩数はWSPがCSPよりも有意に少なかった(p<0.01)。 これらのことから,ヤクの摂取量の多い植物と嗜好性の高い植物とは一致せず,草地における可食草種構成の変化によって変動することが明らかになった。また,ヤクはパドック(季節)と時間帯により採食行動とその位置を変えて,牧区全体を利用することで栄養摂取量を最大にしようとしていると考えられた。
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