2005 Fiscal Year Annual Research Report
単細胞生物粘菌による幾何学的パズル問題の解決法と細胞内計算アルゴリズム
Project/Area Number |
15300098
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 哲男 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20113524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中垣 俊之 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (70300887)
高木 清二 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80372259)
西浦 廉政 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00131277)
小林 亮 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60153657)
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Keywords | 粘菌 / 細胞極性 / 計算アルゴリズム / 自己組織化 / 数理モデル / 結合振動子 / パターンダイナミクス / 情報統合 |
Research Abstract |
目的 粘菌は進化的に初期に生まれた巨大アメーバ様細胞で、その変形体は巨大な裸の原形質塊である。この原始生命体は、外界情報を受容し、判断し、適切に応答するといういわば脳的機能を持つ賢い生命システムである。本プロジェクトは、粘菌の他の生物では見られない特徴を活用し、細胞の秘めたる計算能力を引き出し、その計算アルゴリズムを細胞内非線形ダイナミクスに基づいた数理モデル化により解明することを目的とする。 本年度の主要成果 1.複合刺激に対する粘菌の情報統合アルゴリズムに係わる実験とモデル構築. 誘引物質(グルコース、ガラクトース)と忌避物質(キニーネ、ピクリン酸等の苦味物質、酸)の同時刺激に対する行動を定量的に解析した。誘引物質がその閾値濃度以上で共存すると、忌避物質への応答は誘引物質の濃度の上昇とともに、ほぼ忌避物質ならびに誘引物質の濃度比の関数として高濃度側へシフトした。競合的シグナルの統合モデルを構築した。すなわち、(a)誘引刺激ならびに忌避刺激によりそれぞれの細胞内シグナル伝達物質濃度が上昇する。(b)シグナル伝達物質が、競合的にあるタンパク質に結合する。(c)結合体の割合が行動に比例する。このモデルにより、2桁も応答濃度がシフトする実験結果を説明した。 2.粘菌の多様なパターンダイナミクスを再現する結合振動子モデルの構築. 粘菌の運動、変形、管形成、進行端の形成に関する細胞生理学的知見を総合し、数理モデルの基本的枠組みを構成した。結合振動子系に、流体力学の保存則を組み込み、生成する圧力差が流れと振動子にフィードバックする構造である。このモデルにより、細胞融合時の逆位相関係、周辺部での位相の逆転など2Dでの実験結果を、シミュレートした。
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Research Products
(7 results)