2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動に依存した翻訳調節とその生理的意義に関する研究
Project/Area Number |
15300122
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (70221372)
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Keywords | ニューロン / 翻訳調節 / BDNF / mTOR / 4EBP / p70S6K / LTP / 局所的蛋白合成 |
Research Abstract |
平成16年度には以下の研究成果をあげた。 申請者は以前から神経活動/神経伝達物質/神経栄養因子が相互に作用していることを明らかにしている。ニューロンにおける翻訳活性化の直接的なトリガーとして、神経栄養因子であるBDNF(brain-derived neurotrophic factor)が主にmTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル経路を活性化することを見いだした。ニューロンではBDNF/TrkB-PI3K-Akt-TSC2-RheB-mTOR/raptorとシグナルが伝達され、その結果p70S6Kと4EBPのリン酸化が起こり、翻訳が活性化される。またリン酸化蛋白を認識する抗体を用い培養ニューロンを免疫細胞化学的に染色することにより、BDNFによる翻訳の活性化が樹状突起で局所的に起こっていることも明らかにした。空間的に限局した局所での翻訳活性化は特定の神経回路の(機能的)形成/強化に役立つと考えられ、神経可塑性の分子基盤の一つをなすものと考えられた。 それを支持する結果として、海馬スライスでのLTPパラダイムにおいて、上記mTORシグナルの活性化が見られた。シャーファー側枝の高頻度テタヌス刺激により、CA1領域でmTOR,4EBPのリン酸化が認められ、この活性化とLTPの成立はmTOR阻害剤であるrapamycinによって完全に抑制された。 以上の結果から、神経活動によって神経栄養因子を介し、mTORシグナルを活性化することによって、シナプス近傍で新規蛋白合成がたかまること、その結果、シナプスの可塑的変化が起こることが強く示唆された。
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Research Products
(5 results)