2005 Fiscal Year Annual Research Report
肥厚性血管病の発病並びに局在化に及ぼすせん断流れおよび水透過速度の影響
Project/Area Number |
15300150
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
狩野 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30241384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 光一 東京農業大学, 生物産業学部, 助教授 (20301012)
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Keywords | 動脈硬化症 / 吻合部内膜肥厚 / 人工血管 / 血流 / リポ蛋白 / 単核細胞 / 内皮細胞 / 平滑筋細胞 |
Research Abstract |
【1】人工血管を生体に移植した場合には、動脈硬化症および吻合部内膜肥厚などの局在化機構として我々が提唱しているところの血管内壁表面上におけるリポ蛋白の濃縮・枯渇現象が起こり、形成される偽内膜の厚さがその血管の水透過速度の大小により異なることが予想される。そこで、イヌの総頚動脈に、内径3mmで、水透過速度が大きく異なる3種類の人工血管、即ち、組織固定して作製したイヌの総頚動脈(GAグラフト)、市販のePTFEグラフト、自作のポリエステル布製グラフト(PEグラフト)を端端吻合により間置移植し、それらを1週から1年後に採取し、管壁における水透過速度の測定、走査電顕による内表面の観察および細胞層の厚さの測定を行った。その結果、人工血管に形成された偽内膜の厚さは、移植前における水透過速度が生体血管のそれに最も近い値を示したGAグラフトで最も薄く(2μm程度)、水透過速度が最も大きかったPEグラフトで最も厚く(術後2ヶ月のものでも126μm)なっていることがわかった。 【2】独自に開発した組織工学的方法を用いて内径3.0mmのePTFEグラフトにウシ大動脈由来平滑筋細胞および内皮細胞を重層播種共培養することによりハイブリッド人工血管を作成し、これを用いて0.92mmから3.00mmへの急激な拡大管を形成し、ヒト単核細胞(THP-1)を含んだ細胞培養液を定常流で循環還流して血管壁への単核細胞の付着・侵入に及ぼす渦流れの影響について検討した。その結果、THP-1の付着・侵入は、流れが遅く壁せん断応力が小さい拡大管入口近傍の淀み点および環状渦の最先端にあたる再付着点近傍で最も多く、流れが速く壁せん断応力が大きい渦の中間部および再付着点の下流部で少ないことがわかった。この結果は、動脈硬化や内膜肥厚が流れが遅く壁せん断応力の小さい領域に起こりやすいという臨床学的データと一致するものである。
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Research Products
(9 results)