2003 Fiscal Year Annual Research Report
学習障害児の就学前スクリーニングと治療教育効果に関する研究
Project/Area Number |
15300209
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
宇野 彰 国立精神・神経センター, 知的障害部, 室長 (10270688)
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Keywords | 学習障害 / 就学前 / スクリーニング / ラピッドネーミング / 音韻想起 / 図形の記憶 / ワーキングメモリ / 音韻認識 |
Research Abstract |
本研究の目的は、就学前に学習障害児を検出できる検査方法を作成することである。また、学習障害検出後の指導教育方法について科学的に検討することである。治療法を開発し科学的に効果測定し、確立することもいうまでもなく重要である。その結果、現在小学校で発見されている学習障害児が就学前に発見され、適切な対応がなされることによって不登校は少なくなり、自己に肯定的な成人として社会に羽ばたくことが可能になり、社会全体が活性化していく方向につながることも期待される成果のひとつと思われる。研究初年度は検査法の開発と基準値の作成を目的とした。 検査は以下の6課題から構成された。すなわち、音韻想起を測定する課題としてのラピッドネーミング(Rapid Automatized Naming : RAN)、音声言語の発達を測定するための検査としての文章の聴覚的理解課題、ワーキングメモリ能力を測定する課題としての数列の逆唱、音韻認識能力を測定する課題としての単語の逆唱課題、図形の記憶力を測定する課題としての直後再認課題およびひらがな1文字の音読課題である。認知能力を測定する4課題と学習到達度2課題である。就学前6ヶ月以内の年長児1227名に実施した結果、認知能力を測定する4課題は現時点でのひらがなの音読到達度を予測する指標として有用であることがわかった。各検査項目間の相関はいずれも有意に高かったが、パス解析の結果、文章の理解力とかな音読力とは独立した能力と考えられ、学習障害の大きな2タイプに対しても鋭敏な検査であることが示された。その結果、就学前の年長児にとっては就学前のひらがな音読力と音声言語の発達双方を測定できる検査であることがわかった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 金子真人, 宇野彰, 春原則子: "就学前6歳児におけるrapid automatized naming(RAN)課題と仮名音読成績の関連"音声言語医学. 45(1). 30-34 (2004)
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[Publications] 宇野彰, 春原則子, 金子真人, 加我君孝, 木村さち子: "失語症例や聴覚失認例におけるハンディキャップの調査と社会福祉のあり方に関する研究"精神保健研究. 49. 137-140 (2003)
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[Publications] 粟屋徳子, 宇野彰, 庄司敦子, 上林靖子: "音韻処理能力と視覚情報処理能力の双方に障害を認めた発達性書字障害児の1症例"小児の精神と神経. 43(2). 131-138 (2003)
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[Publications] 狐塚順子, 宇野彰, 北義子: "新造語と錯語を呈した小児失語症1例の経過"音声言語医学. 44(2). 131-137 (2003)
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[Publications] 宇野彰, 金子真人, 春原則子: "学習障害児に対するバイパス法の開発-機能障害に関するデータに基づいた治療教育-"発達障害研究. 24(4). 348-356 (2003)
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[Publications] 宇野彰, 春原則子, 金子真人, 新貝尚子, 坂本和哉, 狐塚順子, 加我牧子: "小児失語と言語発達の臨界点"神経研究の進歩. 47(5). 694-700 (2003)