2005 Fiscal Year Annual Research Report
児童・生徒にとって適切な短距離疾走距離についての研究
Project/Area Number |
15300212
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
伊藤 宏 静岡大学, 教育学部, 教授 (20022296)
|
Keywords | 適切な疾走距離 / 主観的運動強度 / 共分散構造分析 / 最大心拍数 / 運動特性 / 動作分析 / 60m疾走距離 / リレー教材 |
Research Abstract |
一年目は小学生5年男女195名、中学校2年生男女276名を対象に、適切な短距離疾走を求めるために40m、60m、80m、100mを走ってもらい、スタートからゴールまでの速度、歩数頻度、歩幅を測定し、それぞれ疾走中の実態を把握した。疾走後に、それぞれの疾走距離に対する「きつさ」を客観的にとらえるために、疾走中の心拍数、ボルグの主観的運動強度、疾走直後の距離に対するイメージをSD法で回答してもらい、その回答を因子分析、共分散構造分析で分析し、意識の因子構造を求めた。 その結果、小学5年生男女児童は80m走以上の距離で疾走速度の大きな減速がみられたこと、疾走直後の心拍数でも80m走以上の距離では、最大心拍数の95%以上を示し、主観的運動強度も80m走以上が4以上(3が平均値)の大変きついを示した。さらに、それぞれの疾走距離に対するイメージは、疾走距離によって違うが、「意欲性」、「心理的負担感」、「競争感」が抽出された。さらに、共通して出てくるイメージは「心理的な負担」であった。この結果から、小学生5年生では80m以上の疾走距離は適しないことが判明した。 二年目は、これまでの研究結果を英文で取りまとめ、2004年8月、アテネで開催されたオリンピックスポーツ科学学会で発表を行った。なぜそのような研究をはじめたのか、至適距離の意味はどういうことなのかなどいくつかの指摘を受けたので、これらの指摘を考慮しながら三年目の研究に入った。 三年目では、以上の結果から得られた至適距離を用い、リレーを用いた授業やいろいろな児童に短距離走を走ってもらい、それらから得られた結果を分析した。リレー形式では50mの距離を用いて行ったが、今まで以上に速い速度でバトンが渡されるので、バトンパスの重要性が再認識された。さらに、全国小学生交流大会で優勝した男女児童を始めほかの種目で優勝した選手の60m疾走の50m地点での疾走フォームを分析し、着地瞬間、身体重心の着地足上の脚の動きは一流選手の動きと同様な動きをしていることが判明した。また、短距離走を主に練習しているA群とバレーボールを主に練習しているB群、特別に運動していない対照C群の50mを分析したところ、男女ともA群は20m以降C群よりも最高速度、速度の維持率が有意に高く、ストライドもピッチもハイレベルで疾走していたことが判明した。B群はそのちょうど中間の疾走能力を示した。 これまでの小学生、中学生には競争の観点から疾走距離が決められていたと思われる。しかし、今回の研究から、どの年齢の児童、生徒にも短距離走の特性を最高速度で走れると捉え直すと、小学5年生では60m前後、中学2年生では80m前後の疾走距離が短距離走の醍醐味を味わえ、さらに疲労が少ないので授業では何回でも出来る利点が得られた。
|
Research Products
(3 results)