2005 Fiscal Year Annual Research Report
伝統工芸における技術習得の認知的過程と技能の効果的な伝承方法の研究
Project/Area Number |
15300277
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
林部 敬吉 静岡大学, 情報学部, 教授 (20023624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 敬一郎 中京大学, 文学部, 教授 (20023591)
阿部 圭一 静岡大学, 情報学部, 教授 (80022193)
雨宮 正彦 静岡大学, 情報学部, 教授 (00281056)
ウイルキンソン ヴァレリ、アン 静岡大学, 情報学部, 教授 (40240626)
松王 政浩 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60333499)
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Keywords | 伝統工芸技能 / 技能の伝承方法 / 暗黙知 / 技能の修得の認知過程 / 伝統工芸士 / わざ言語 / 師匠と弟子 / 伝統工芸品 |
Research Abstract |
今年度本研究では、伝統工芸技能の修得過程を明らかにするために、どのような「わざ言語」があり、それが技能修得にどのような役割を果たしているのかを分析、検討した。調査対象は、東京都伝統工芸士名簿登録者233名と静岡市に在住する伝統工芸職人(静岡市伝統工芸技術秀士)34名である。伝統工芸産品については、東京都の場合は35品種、静岡市の場合は10品種である。調査方法は、郵送による調査とし「わざ言語」の語句名およびその内容についての自由記述とした。 回答を得た伝統工芸品種は、東京都伝統工芸士からの回答数は、32名である。回答された工芸品種は、東京手描友禅、江戸木彫刻、江戸刺繍、江戸表具、江戸漆器、江戸三味線、江戸和竿、東京本染浴衣、東京銀器、江戸刃物、江戸甲胄、江戸木目人形、江戸衣裳着人形、東京打刃物、東京無地染、江戸鼈甲、東京琴、江戸指物18品種である。静岡市伝統工芸技術秀士からの回答は10名、回答された工芸品種は木工指物、木工挽物、下駄塗、漆塗り5品種である。 調査結果、次のことが見いだされた。 (1)職人が製作工程で使用する「わざ言語」には、「工程に関する言語」、「道具に関する言語」、「原料に関する言語」、そして「わざに関する言語」があること。 (2)工程に関する言語は、工程の段階を表示するため、親方が製造工程を弟子に見させ、一連の工程を覚えさせるのに役立つこと。 (3)道具に関する言語は、道具の名称、およびその使い方に関するものに大別できる。これらは、手や指、身体の使い方などに注目させたり、道具の手入れについて表現したりしていること。 (4)原料に関する言語には、原料そのもの、および製品製作に関わるその他の資材に関するものがあること。 (5)わざに関する言語には、弁別的(識別的)わざ言語(製品の出来具合に関するもの)、指導的わざ言語(親方が弟子にわざを教えるときに使用するもの)、比喩的わざ言語(わざの本質を比喩的に表現したもの)があること。 以上の調査結果から、「わざ言語」は、観察段階、模倣段階、目利き段階のそれぞれで、親方が弟子の技能の修得を促進するために役立つとともに、これらの「わざ言語」は、暗黙知の一端を表現し、弟子にわざの修得のための手がかりを与えていると考えられる。
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Research Products
(3 results)