2005 Fiscal Year Annual Research Report
文化財に及ぼす大気汚染の影響と文化財保環境形成の研究
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15300293
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
西山 要一 奈良大学, 文学部, 教授 (00090936)
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Keywords | 文化財 / 大気汚染 / 奈良 / トリエタノールアミン円筒濾紙法 / 文化財サンプル / 文化財の損傷・劣化 / 劣化促進実験 / 文化財保存環境形成 |
Research Abstract |
本研究は、文化財の密集する奈良盆地北部の文化財所在地を主なフィールドとして、大気環境、とりわけ文化財の損傷の主原因である酸性大気汚染物質(二酸化硫黄、二酸化窒素、塩化物イオン)の濃度を観測するとともに、金属・顔料・染色等のサンプルおよび実際の文化財への影響を計測し、大気汚染がさまざまな材質よりなる文化財に及ぼす影響を定量化し、その予防策と大気汚染から文化財を保護する環境の形成を研究するものである。また、比較研究のため、鹿児島県屋久島、韓国扶余、レバノン国ティールでも調査・観測を実施している。この研究は奈良のみならず、日本全国ひいては世界の大気汚染の影響下にあって損傷の危機に曝ある文化財の保存に寄与するものである。 昨年度に引き続いて、奈良盆地北部の東大寺経庫(校倉)、東大寺大仏殿、正倉院、春日大社、元興寺、十輪院、般若寺、唐招提寺、薬師寺、平城宮跡、奈良大学の11観測点、および屋久島、レバノン・ティールにおいて、トリエタノールアミン円筒濾紙法による大気汚染(二酸化硫黄、二酸化窒素、塩化物イオン)の濃度測定、温湿度データロガによる温湿度変化測定の記録をとるとともに、それらのうち7観測点に設置する金属・顔料等の大気曝露サンプルの色彩と表面生成物等の変化(劣化)の測定を行った。また、7観測点には金属・顔料のサンプルを大気曝露し、その色彩変化等(劣化)を追跡するとともに、同サンプルの恒温恒湿器を使った劣化促進実験を行っている。各観測点における曝露サンプルと恒温恒湿器の劣化実験サンプルの測定データを比較し、大気汚染の文化財への影響を定量化し評価する作業を継続中である。本件究の最終目的である、適正な文化財保存環境の形成の基準づくりを目指す。
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Research Products
(4 results)