文化財資料用携帯型マルチレーザーラマン分光分析装置の基礎的開発研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 15300299
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
• Research Institution: National Research Institute Cultural Properties, Nara
• Principal Investigator: 高妻 洋成 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化センター, 主任研究官 (80234699)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 肥塚 隆保 独立行政法人文化財研究所, 奈良文化財研究所・埋蔵文化センター, 保存修復科学研究室長 (10099955)
• Keywords: マルチレーザー / ラマン分光分析 / 非破壊分析 / 携帯型装置 / 励起レーザー / 材質分析 / ラマンスペクトル / スペクトルライブラリー

Research Abstract

本研究では、世界的にも注目されてきつつあるレーザーラマン分光分析法を文化財資料の非破壊非接触の材質判定分析に対して適用できる技術を開発し、文化財資料のラマンスペクトルライブラリーを構築することを目的としている。
本年度はこれまで実験室に運び込むことのできなかったもの、発掘直後あるいは発掘現場における遺物などに対しても、フィールドにおいて迅速かつ精度の高い材質分析が可能となる携帯型装置を試作し、この装置を用いた標準試料の基礎データの蓄積と文化財資料のラマンスペクトルの測定をおこなった。
携帯型装置は、これまで得られている反射スペクトルおよび蛍光分光スペクトルのデータをもとに波長532nmと785nmのレーザーを選定し、それに対応する分光器を備えた装置を作製した。
標準試料(無機物・有機物)に対して、フーリエ変換赤外分光光度計、紫外可視分光光度計、蛍光分光光度計、ならびにレーザーラマン分光分析装置を用いて、基礎データを蓄積し、ラマン分光分析における最適条件の検討をおこなった結果、顔料については黄色〜赤色の領域の色に対しては785nmの励起レーザー光が、緑色〜青色の領域の色に対しては532nmの励起レーザ光の使用が有効であることが明らかとなった。
文化財資料のラマンスペクトルの測定では、作製した携帯型ラマン分光分析装置により中国大召寺壁画の分析調査をおこなった。その結果、785nmの励起レーザーにより石黄、水銀朱、鉛丹、ベンガラを、また、532nmの励起レーザーにより緑青を精度よく検出することができた。しかしながら、土が表面に付着している部分については、バックグラウンドの著しい増大によりラマンスペクトルの検出が困難であった。この土によるバックグラウンドの増大の問題については、今後解決していかなければならない大きな課題である。

Research Products

• [Publications] 高妻洋成, 肥塚隆保, 沢田正昭, 杜曉帆, 杜曉黎: "中国・大召寺壁画の非破壊分析"文化財保存修復学会第25回大会研究発表要旨集. 24-25 (2003)
• [Publications] 高妻洋成, 降幡順子, 肥塚隆保, 沢田正昭: "カリンバ4遺跡土坑墓出土漆製品の材質分析"北海道恵庭市発掘調査報告書・カリンバ4遺跡. 219-227 (2003)