Research Abstract |
温室効果ガスを削減し,地球温暖化問題の解決に役立つ制度をどのように設計すべきかという問題について,ミクロ経済学理論,国際関係論,実験経済学,ゲーム理論の手法などを活用した分析を行った.まず,排出権取引における補完性(supplementarity),つまり,あくまで国内での削減・抑制努力を行うことを優先し,それを補完するものとして排出権取引を利用するべきであるという,排出権取引における最大の論点の一つである問題を,ゲーム理論の手法を用いて吟味した.さらには,京都議定書の発効後における長期的な日本の削減目標水準に関する分析や,地球環境ガバナンスの制度的枠組の問題などについて考察した. また,温室効果ガスの削減などの公共財供給のため制度設計において,スパイト行動(spiteful behavior)が重要な役割を果たすことが経済実験により判明した.従来の経済理論では,制度の参加者たちは,自己の利得のみに関心があり,自己利得の最大化行動をとると想定されてきた.しかしながら,実験で被験者たちは,相手が自分と比較して大幅な利得を得ようとしている場合には,自分の利得が少しくらい下がっても,相手の利得を下げるようなスパイト行動をとることを観察した.また,この行動がより効率的な資源配分をもたらす可能性があることを発見した. さらに,制度の参加者にどのようにやる気をおこさせ,インセンティブを与えるかに関する制度設計の基礎研究の一つとして,戦略的操作不能(strategy-proof)なメカニズムの有効性について理論と実験の両方の観点から分析した.
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